CLOSE UP INTERVIEW 本来の自分たちを作り直すリビルディング

昨シーズン、ライスボウルトーナメント準決勝で敗れ、2年連続で日本一を逃した。
チームは“優勝”を知るメンバーが減り、世代交代に直面している。
リーグのフォーマットが変わる今シーズン、
山本洋ヘッドコーチは、この10年で築き上げてきた土台を大事にしながら、
もう一度、自分たちを作り直すことで日本一奪還を目指す。

 

「チームカルチャーとして、常に謙虚な姿勢で学び続けるというものがある。
他責思考にならずに自分自身に矢印を向ける。
絶えず高みを目指していく行動規範があります」
——山本洋ヘッドコーチ

 

■生まれ変わるのではなく、本来の自分たちを作り直す

──2025年度シーズンはライスボウルトーナメント準決勝でパナソニックインパルスに敗れ、2シーズン連続で日本一を逃しました。
「レギュラーシーズンで2敗して、準決勝で負けたのは、現状の実力だと理解しています。15年から24年までの10年間で8回優勝して、我々とパナソニック、オービックシーガルズが3強と言われたりもしましたけれど、他のチームも含めて追いつけ、追い越せでやってきた10年間です。昨シーズンの決勝の時点で、取り組みも含めて相手に上回られたという認識でした。今シーズンもフィジカルでも1対1でも、相手に上回られたところがありました」

──自分たちの力を出し切れなかったのではなく、力が足りなかった、と?
「そう思います。1人ひとりが大きく劣っていたわけではありませんが、少しの差が結果として表われました」

──チームスポーツですから、1人ひとりの比較でわずかでしかない差が、トータルで勝敗を分けることになります。
「我々が結果を残していた間に、同じ企業チームのパナソニックが選手の採用なども含めて勝つための積み上げをしていて、それがここ2シーズンの結果に表われた、というとらえ方もできます。我々の歴史を辿れば、暗黒のような時代を経て結果を残してきた10年があり、優勝を知るメンバーが少なくなってきている。今は世代交代のタイミングにある、という認識です」

──どんなチームでも世代交代は不可避です。そして、それは簡単ではありません。
「結果を残した10年間を土台として、作り上げてきたものを大事にしながら、ここでもう一度基礎固めをしていく。選手が入れ替わっているので、『これが富士通フロンティアーズのフットボールだ』というものを深く理解している選手が、まだ多くありません。そういう選手がパナソニックのベテランとビッグゲームで対峙すると、いろいろな違いが表面化してしまいます。選手には生まれ変わるのではなく、もう一度本来の自分たちを作り直すということで、リビルディングという言葉を使っています」

──世代交代とそのために必要な人材育成は、企業の組織マネジメントに通じます。
「学生から社会人チームへ入ってきて、すぐに試合で通用する選手はほぼいません。我々は常に日本一を目指していますから、目の前の試合の結果にこだわりますが、並行して選手を育成していかないと、数年後に結果を残せないということにつながりかねません。日本一をつかむのに値する選手を育てることが大事で、そこは焦らずにやっていきます」

──アメリカンフットボールは11人でやるスポーツですから、チーム全体のスタンダードを高くしていくことが、勝利につながっていくのでしょうね。
「いい選手やいい外国人選手が入ってくれば必ず勝てる、というわけではありません。自分たちで勝敗をコントロールするには、11人の7人から8人が対戦相手との比較で上回ることが大事です」

──それによって、再現性が高まる。
「と、思います。ビッグプレーやスーパープレーは、ゲームの数パーセントに過ぎないもので、90数パーセントはベーシックなものの積み上げです。試合中の選手は、ファンダメンタルを永遠に繰り返していると言っていいぐらいです。その精度が高いかどうかで、1つひとつのプレーのでき上がりも、最終的な結果も変わってきます」

──ファンダメンタルと呼ばれる基礎的な部分にこだわるということは、プレーの細部にまで妥協しない、という言い方もできそうですね。
「正しいプレーをできる選手がそろったチームは強い。僕はそう思っています」

 

■1人ひとりがロイヤリティーを持ち覚悟と責任を持って関わっていく

——今シーズンからリーグのフォーマットが変わります。春季シリーズとして5月から7月に4試合、秋季シリーズとして8月末から11月まで11試合が行なわれます。
「今までは秋からのリーグ戦が本番という位置付けで、春のシーズンは前年度まであまり出場していない選手や若い選手を起用して、チームの総合力を上げる時間に充てていました。ロースター登録する選手の絞り込みを、夏まで引っ張ることができたのです。5月開幕になると、選手選考が非常に難しい。そこはポイントです」

──シーズン中の練習内容や練習の強度なども、変わってきそうですね。
「選手たちをいかにいい状態で送り出せるかは、2つ目のポイントになります。今までどおりの練習では、1シーズン持たないでしょう。練習メニューとか時間を考えて、疲労が蓄積しないようにしなければ」

──手探りのシーズンになりそうですね。
「それだけに、いつも以上にコミュニケーションが大事になります。我々スタッフが思うことと選手の思いは、必ずしもすべて重なり合うわけではありません。こちらの意図を、選手たちにしっかり説明する。選手の声を吸い上げる。そういった作業を絶えずやっていく必要があります」

──富士通スポーツが掲げる「挑戦に終わりはない」のスローガンを、フロンティアーズにどのように落とし込んでいますか。
「我々のチームカルチャーとして、常に謙虚な姿勢で学び続ける、というものがあります。試合で負けることがあっても、他責思考にならずに自分自身に矢印を向ける。絶えず高みを目指していく、という行動規範があります」

──まさに挑戦し続ける、ですね。
「言われたことだけをやっていては、一定のことしかできないし、一定の結果しか出ないでしょう。チームが良くなるために、1人ひとりがロイヤリティーを持ち、覚悟と責任を持って関わっていく。そういう姿勢がチームを変えていくし、チームを強くしていきます。技術とかフィジカルだけではないということは、選手たちとも共有しています」

──心技体は等しく重要でしょうが、最上位は「心」でしょうか?
「日本一を争うレベルでの戦いでは、それに相応しい技術とフィジカルは備わっているもので、その2つを動かすのは『心』だと僕は考えます。仕事とフットボールを両立させながら、去年の自分を上回る。ライバルを上回る。同じことをやるだけでは結果は変わりませんから、自分になかったものをプラスするために、自分で考えて行動する。しっかりとしたメンタリティーがなければ、実践できないでしょう」

──つまりは覚悟と責任が問われます。
「日本一を獲れていないのは、それに見合う集団ではなかったということです。我々には足りないものがあった。その事実としっかり向き合って、結果を残せる組織作り、選手育成を意識していきます」

(取材・文=戸塚 啓)