三宅 昂輝(#21/RB) エースランニングバックへの覚悟

富士通フロンティアーズ在籍5年目を迎えた2025年度シーズン、
三宅昂輝は、ここまで続けてきた努力が結実したことを強く実感した。
プレーに表れた変化は、自身を次なるステップへと導く。
2年連続で“日本一”になれなかった悔しさを胸に
エースランニングバックとしてチームを引っ張っていく覚悟を見せる。

■昨シーズンまでの自分たちとは違う姿を見せる

——2025年度シーズンは、ライスボウルトーナメント準決勝でパナソニックに敗れました。2年連続で日本一を逃した結果をどう受け止めていますか?
「まずは、めちゃくちゃ悔しかったですね。個人的にも(ライスボウルトーナメント準決勝では)あまり試合に出られず、大事な場面はすべてニック(トラショーン ニクソン)でした。そこに自分が入れなかったということと、あとは試合に出たときも、チームを助けられるようなプレーができませんでした。チームとしても悔しい敗戦でしたけど、それ以上に、個人的にチームに勢いをもたらすプレーができなかったことに、悔しさが残っています」

——チームとして決勝に勝ち進めなかった要因をどのようにとらえていますか?
「一つには絞れませんが、やはり大きなところとしては、気持ちの部分が足りなかったように思います。第2節でノジマ相模原ライズに、第6節でSEKISUIチャレンジャーズに敗れ、チームとして自信を失っていた影響も少なからずありました。今までであれば、勝ち続けて、その勢いのままトーナメントに入ることができましたけど、そうした流れを作れないまま、パナソニック インパルスとの試合を迎えてしまったことも敗因の一つだったと思っています」

——2024年度シーズンのライスボウル決勝で敗れたパナソニックに、再び敗れた悔しさもあるのでしょうか?
「パナソニックに勝つために1年間やってきたので、その相手に負けた悔しさはありますが、リーグで敗れたり、それまでにもうまくいかない時期が続いたりと、相手どうこうよりも、自分たち自身に戦う準備ができていなかったのではないかとすら思っています」

——100%の自信を持って、試合に臨める状況ではなかったところに結果が表れていると?
「そう思います。普段の練習から自信を養い、高い意識を持って取り組む必要性に気がつくのが遅すぎたのかな、と。シーズン後半になって、ようやく火がつきましたが、シーズン当初からギアを上げて、練習にも試合にも臨めていたら、きっと結果は変わっていたのではないかと感じています」

——お話にもあったようにレギュラーシーズンでも2敗しています。その敗戦に感じたことはありますか?
「(2024年度シーズンのライスボウル決勝で)パナソニックに敗れ、次こそは決勝で勝つことを目指してやっていただけに、シーズン途中に負けたダメージによって、チームとしての自信や気持ちが崩れてしまうメンタル的な弱さがあったように思います」

——勝ち続けてきたチームだけに、敗戦を受け止めて跳ね返していく力がなかったと?
「はい。それだけにSEKISUIに負けた2敗目が大きくて、おそらくチームのみんなに、心のどこかで『勝てるだろう』という慢心があったように思います。勝てると思っていたところで、負けてしまう状況を受け入れられなかったのかな、と。それは試合の結果だけではなく、試合中も当てはまっていて、だから劣勢に立たされたときには、焦りが生じて、思い通りのプレーができなくなったり、冷静な判断ができなくなったりして、敗戦という結果にもつながってしまったと感じています」

——「常勝」を目指すフロンティアーズとしては、勝ち続けることが使命である一方で、負けることに慣れていないため、劣勢に立たされる、もしくは負けそうな展開になったときに、冷静な対応や判断ができなくなるということでしょうか。
「僕自身は今年でフロンティアーズに入団して6年目になりますが、ここ2シーズンはタイトルから遠ざかっているものの、それまではパナソニックにも、オービックシーガルズにも負けたことはありませんでした。だから、負けたときには、『自分たちも負けることもあるんやな』という感覚にすら陥りました」

——それだけ負けることを想定していなかったと?
「だから、試合中に焦ってしまうのでしょうね。予期せぬことや想定していないことが起きると、人が冷静さを欠いてしまうのと同じように……」

——一方で昨シーズンにそれ(敗戦)を経験したことは、今後の自分たちの財産になっていくのではないでしょうか?
「財産にしていかなければいけないと思っています。自分はオフェンスの選手ですけど、昨シーズン、ノジマにライスボウルトーナメントで勝った試合前後は、ディフェンスの選手たちと言い合いになるくらい、チーム全員の気合いがみなぎっていました。決して言い合うことが良いとはいいませんが、それくらいの熱量を常日頃の練習から意識して続けていくことが大事なのではないかと実感しました。みんながみんな、昨シーズンの結果に対して悔しさを抱いたからこそ、今シーズンの練習は、最初から気合いが違うように感じていますし、昨シーズンまでの自分たちとは違う姿を見せられると思っています」

——敗戦から得たこともあったということでしょうか。
「この間の練習で、趙(翔来)さんが『ストレッチしているときから、すべては始まっているんだぞ』と言って、チームにスイッチを入れてくれたのですが、まさにそういうところから変えていかなければいけないと思っています。実際、僕自身もトレーニングの開始から終わりまで集中してやり切る意識は変わったので」

■フロンティアーズでの取り組みが結実した5年目の昨季

——チームとしては悔しい結果に終わった一方で、個人に目を向けると、2024年度シーズンよりも、2025年度シーズンのほうが、ラン数(Run)、獲得ヤード(Yds)、タッチダウン数(TD)と、軒並み向上しています(※Run/2024:34 2025:45 Yds/2024:262 2025:314 TD/2024:5 2025:8)。
「データ的に見ても向上しているように、成長を実感しています。自分はもともと、スピードが強みのRB(ランニングバック)ですが、ここ数年のトレーニングによって、一度のタックルで倒れないフィジカルが身についてきたと思っています。実際、昨シーズンは今までなかったような、相手にタックルされたあとも倒れずに走って独走するプレーが出せるようになってきました」

——印象に残っている試合はありますか?
「(第3節の)OrientalBioシルバースター戦や(第5節の)IBM BIG BLUE戦です。それまでは相手にタックルを受けて、プレーが止まってしまっていたのが、そのまま走り抜けられるようになったことに成長を実感した試合です」

——フロンティアーズに加入して今年で6年目ですが、ここまでどのようなステップを踏んで成長してきたように感じていますか?
「社会人1、2年目はケガが多く、今よりも身体も細く、得意のスピードですら社会人の速さに追いつけず、自分が思うようなプレーができない時期を過ごしました。そのため3年目には、山本洋ヘッドコーチや金雄一コーチを始めとするスタッフから『フィジカルを強化したほうがいいのではないか』というアドバイスをもらって。そこからトレーニングの取り組み方を変え、さらに田村謙太郎ストレングスコーチのもとで行う『タムトレ』に加わって、瞬発力や体幹が備わってきたのが4年目でした。そうやって継続してきたことが、5年目の昨シーズン、形としてプレーに表れたと思っています」

——スピードを武器に挙げてくれましたが、そもそもアメリカンフットボールとの出会いはいつだったのでしょうか?
「父の影響で、小学生のときはラグビーをやっていたのですが、中学受験を機に一度、ラグビーをやめたんです。それで関西学院中学部に入り、ラグビーを再開しようと仮入部したのですが、仲の良かった友人にアメフトをやらないかと誘われて。興味半分で練習に参加してみたら、ラグビーと似ているところもあるし、ボールの形も一緒だったので楽しくて。関西学院はラグビーも強豪でしたが、アメフトはさらに強豪と聞いたので、どうせスポーツをやるなら強いチームでやりたいなと思い、アメフトに転向したのがきっかけです。そのまま高校、大学も続けてきました」

——振り返ったとき、転機となるようなターニングポイントはあるのでしょうか?
「ここまで壁だらけでしたけどね(苦笑)。フィジカル面、RBとしての感覚、嗅覚、理解度と、カテゴリーが変わるたびに壁にぶつかってきました」

——そのなかでも最も悩み、苦しんだ時期はあったのでしょうか?
「中高生までは足の速さを強みにプレーしていました。特に直線を走るスピードを武器にしていて、ボールを持ったら全速力で突破するようなスタイルでした。でも、大学生になると、周りのみんなも考えて走るようになり、状況をしっかりと見て、抜けられる穴を見つけて、そこに向かって加速してディフェンスを抜き去るようにしていました。でも当時の自分は、何も考えずに、ただ真っ直ぐに走るしか考えがおよばず。だから、相手にも止められてしまうし、思うようなプレーができなくなっていました」

——なるほど。
「そうしたとき、コーチに『ただ全力疾走するのではなく、7割くらいの力で走って、ここだと思ったときに10割の力を出せ』と、アドバイスをもらったんです」

——スピードに緩急をつけろと?
「まさに。それから自分のスピードを調整するようになり、そうなると、スピードだけでなく、プレーへの理解度や状況、試合の流れなども事前に確認して、予測するようになりました。さらに、ディフェンスも自分が思っているような動きはしてくれないので、予想とは異なる動きをされたときも対応できるように、走りながらも相手を見て考えるようになりました。そこを意識するようになってから、再びスピードで勝てる状況をつくり出せるようになりました」

——それが活かせた試合はあるのでしょうか?
「(2020年1月3日の)ライスボウルですね。当時、3連覇していたフロンティアーズと対戦した試合で決めたタッチダウンは大学時代のハイライトでした」

——改めて振り返っていただけますか?
「僕以外の全員が右でランフェイクして、左にいた僕がボールを受け取って、スピードで勝負しました。スピードを活かして外側を走っていって、今はコーチを務めているアルリワン アディアミを振り切ってタッチダウンしました。あれは気持ち良かったですね。試合には負けましたが、東京ドームに3万人を越える観客が集まってくれて、気持ちがブワーッと高まったことを今でも覚えています」

■大学時代に対戦して感じた「強さ」を自分たちが取り戻す

——ターニングポイントとして挙げてくれたライスボウル決勝で勝利したフロンティアーズは、その年4連覇を達成したように、まさに『常勝』といわれるようなチームでした。対戦してその強さを体感した三宅選手としては、再び「強さ」を取り戻さなければいけないという使命感があるのでは?
「間違いないですね。タイトルを獲れない流れを断ち切るためにも、必ず今シーズンはリベンジして日本一に返り咲く。これはマストだと思っています。そのためにも、今の自分たちにできることは、昨シーズンの教訓を活かすことと、今までのチームとは違う、新しいチームを作っていくというくらいの信念が必要だと思っています。RBはOL(オフェンスライン)、WR(ワイドレシーバー)のブロックがなければ走れないポジション。だから、自分がプレーで魅せることはもちろん、周りと一緒に連携して走ることができればと思います」

——今シーズンから「Xリーグプレミア」がスタートします。通年制になり、11チームの総当たり戦になります。
「試合数が増えるイコール、自分の見せ場も増えることになるので、楽しみですね。自分は走って、走って、試合で活躍するのが好きなので、どの試合でも走って勝ち切りたいと思っています」

——2025年度シーズンを最後に、エースランニングバックと呼ばれてきたトラショーン ニクソン選手が引退してコーチに就任しました。次代を担っていく「覚悟」はありますか。
「ニックはずっと頼りがいのあるエースランニングバックでした。過去のライスボウル決勝を始め、大事な試合ではニックにボールを持たせて走らせ、タッチダウンを奪って、チームは勝ってきた試合が多くありました。自分はその彼に負けないようにと思ってやってきましたが、引退してしまった今、彼に追いつくことはできませんでしたけど、これからは自分がチームを助けられるようなエースになりたいと思っています」

——自ら「エース」という言葉を用いましたが、やはりそこは自分が受け継ぎたいという思いがあるのでしょうか?
「ありますね。ただ、ニックがいなくなったから自分がエースになれるとは少しも思っていなくて、彼がいてもエースと呼ばれる存在を目指して頑張っていたように、彼が抜けたからそうしたポジションに付くのではなく、自分の力でその立場をつかみ取りたいと思っています」

(取材・文/原田大輔)