【宮澤夕貴キャプテン 2023-2024シーズン終了インタビュー】
いつも富士通レッドウェーブに温かいご声援を賜りありがとうございます。
2023-2024シーズン終了から約1か月、あっという間だったという方も、とても長く感じた、という方もいらっしゃるかもしれません。
宮澤夕貴キャプテンに、この数週間、どう過ごしていたか、また、改めて2023-2024シーズンを振り返ってもらい、2024-2025シーズンへの思いも聞きました。(取材日:5月4日)
――優勝して3週間ぐらい経ちましたが、翌日からどのように過ごしていましたか?
宮澤 ミーティングなどが入って、全然休んだ気はしません(笑)。日本代表候補にも選んでいただいたので、ウェイトトレーニングも普通にやっていました。でも数日間だけ大分へ旅行に行きました。友人に会いに行って、温泉に……と言ってもホテルの屋上にある温泉ですが、そこに浸ったり、海、山、滝にいってマイナスイオンをたっぷり浴びました。そうそう、福岡まで足を延ばして、キキ(#7林)の故郷である糸島にも行ってきました。すごくきれいなところでした。福岡ではもつ鍋も食べたし、大分・福岡の旅は充実していましたね。もちろん関東でも、甘いものも食べたし、お寿司も食べたし、ENEOSサンフラワーズ時代にお世話になっていたお店にも行って、美味しいものを食べました。
――多くないオフに詰め込みましたね(笑)。家族など近しい人の反応はいかがでしたか?
宮澤 家族はもちろんですが、周りの人もすごく喜んでくださいました。おそらく今までより活躍していたと思っていただけたのだと思います。プレーオフMVPもいただいたので、なおさら喜んでいましたね。「夕貴ちゃん、すごいね」、「MVPおめでとう」と。プレーオフMVPの獲得は2度目なのですが、前回はどちらかといえばプレーオフだけよくて、レギュラーシーズンはさほどの活躍ができていなかったんです。でも今シーズンはレギュラーシーズンを通しても良かったから、周囲の人がより喜んでくださったのだと思います。
――これまでも多くのところで語っていますが、改めて、今回の優勝は何が勝因だと思いますか?
宮澤 やはりコミュニケーションです。今シーズンはチームとしてそこにすごく力を入れてきて、どうやったらチームが良くなるかを全員で話し合いながら、チームを作り上げてきました。シーズン前にはルイさん(#10町田)とニニ(#22中村)、キキ(#7林)、キラ(#25内尾)、アキ(#18藤本)とで食事をしながら、どうチームをまとめていこうかを話し合いましたし、毎回の練習後にも、これは若手も含めた全員で話し合って、「今日はどこが良くなくて、今後こうしていこう」とか、逆に「今日はここ良かったから、これをもっと続けていこう」といった話し合いを重ねてきました。そこで共通理解が生まれたのだと思います。何かを若手に伝えるにしても、これまで以上に丁寧なコミュニケーションをとるようにも心がけました。そうした日々のコミュニケーションの積み重ねが大きかったですね。
――どんなことを話していたのですか?
宮澤 リバウンドとターンオーバーについてですね。レッドウェーブにとってリバウンドはいつでも課題に挙がっていましたし、ターンオーバーも、数字を見ると他のチームよりは少ないんですけど、やはりミスが多いときに負けているんです。でも、どちらかといえば、やはりリバウンドの話が多かったかな。下位チームと対戦するときは身長差や経験の差などもあって、それなりに取れるんです。それがいざ上位チームとの対戦になったとき、同じように取れていたかと言われると、そうではありませんでした。上位チームとの対戦前の練習では、たとえ取れたとしても、相手がこう動いてきたら取れないよねと深く話し合いました。チーム内の結果で満足するのではなく、常に相手が良いプレー、より強いプレーをしてくると想定して「私たちはこうしていこう」としっかり話せていたと思います。
――ご自身のことについても伺います。今シーズン、自分のこうしたところがステップアップできたなって思えるところはありますか?
宮澤 3ポイントシュートだけにこだわらず、インサイドプレーやドライブが増えたところですかね。ディフェンスのパフォーマンスも少しアップしたと思います。今まで練習してきたことが今シーズンはよく出せたと思います。
―――確かにオフェンスにおける宮澤選手のインサイドプレーは、チームに良い影響をもたらしていました。
宮澤 実は今シーズン、男子(B.LEAGUE)のプレーをよく見るようになったんですよ。特にバイウィーク(2月のオリンピック世界最終予選のため、リーグが一時中断していた時期)の頃からかな。千葉ジェッツのゼイビア・クックス選手の映像をよく見るようになりました。彼はスピン(ターン)がとても上手なんです。この動きは私にも使えるって思って。それまでもアシスタントコーチにいろんなスキルを教えてもらっていたんですけど、それに加えて、自分で見て学ぶことにも取り組んでいました。そう考えると、今シーズンはこれまで以上にいろんなことを吸収して、挑戦して、成功も失敗もあったけど、プレーの引き出しが増えた感じがします。だからプレーしていて本当に楽しかったですね。
――なぜ急にクックス選手を見るようになったのですか?
宮澤 千葉ジェッツそのものは以前から好きだったんですけど、実際にじっくり見ていたかと言われたらそうじゃないんです。それが、なんとなく「バスケットLIVEでちょっと見てみようかな」と思って見たら、面白いと。そこからはもう毎試合のように見ていました。富樫勇樹選手のプレーも好きでしたし。男子はシュートを打ち切るんです。ここだというときには、たとえディフェンスがいてもシュートを打ち切るから、見ている私たちにもいいイメージが湧くんです。
――イメージトレーニングにもなった。
宮澤 そうですね。加えて、SNSで国内外のワークアウトの映像が上がっていますよね。それらのムーブを見て、盗めるところを盗むなど、今シーズンはそうやって、積極的にスキルセットを増やしたところはあります。実際にローポストでの1対1が増えたのも、相手がスイッチしたときに、そこで得点できないとダメだと思ったからなんです。ルイさんが怪我で離脱しているときに、自分が得点できなければ負けると思ったから、プレーの引き出しを増やさなければいけなくて、どうやったら得点取れるかって考えたときに「これだ、盗めるぞ」と。
――意欲の高さがプレーにも影響を与えたと。
宮澤 本当に自分自身がステップアップしなければ負けると思っていましたから。相手がわざわざミスマッチになってでもスイッチしているのに、私が3ポイントラインの外側にポップしたままで何もできない状況はどうにかしないと駄目だと思ったんです。そんなときに、B.LEAGUEやSNS、そして後藤祥太アシスタントコーチがそれぞれの選手に合ったワークアウトをしてくれたことで、引き出しが一気に増えたんです。
――それも勝因のひとつですね。では最後に、現時点で来シーズンのことは全然考えてないと思いますが、もし今シーズンに少しでもやり残したと思えることがあれば、教えてください。
宮澤 プレーオフに入ってチームはさらにレベルアップしたと思います。でもそこに至るまでの出来を振り返ると、完ぺきとは言えません。ベンチメンバーのステップアップにはさらに期待したいと思っています。ファイナルの第3戦でコートに立ったベンチメンバーは3人ですけど、練習などを見ていても、全員がコートに立てる力を持っているんです。それをコンスタントに表現できるようにならなければいけません。来シーズンはリーグ自体が2部制になり、厳しい戦いが続くことになるので、なおさらベンチメンバーの活躍が必要だと思います。ディフェンスの強度も落としたくないし、リバウンドも、練習中のターンオーバーも……そう考えたら、きりがないですね(笑)。
――失礼ながら、宮澤選手をはじめとするスタメンのほとんどはベテランと呼ばれています。それだけにベンチメンバーがステップアップすれば、休むこともできます。
宮澤 休むというよりも、ベンチメンバーが活躍することでチームに勢いが出るからこそ、彼女たちの活躍が必要になるんです。1分でも3分でもいい。コートに出たときにチームを加速させてほしいんです。簡単なことではないことはわかっていますが、それでもレッドウェーブの選手たちはみんなそれができると思うし、だからこそ、それをコンスタントにできるチームにしたい。そのためには私たちスタメンも練習中からそうなるような環境をつくらなければいけません。ベンチメンバーがコートに立つことは、スタメンが休むだけではないメリットがたくさんありすぎるんです。そんなチームを、来シーズンもみんなで築いていきたいと思います。