BTテーブスヘッドコーチ・宮澤夕貴キャプテン
シーズン終了インタビュー

レッドウェーブの2022-2023シーズンが終了して、1か月以上が経とうとしています。その間、新しいステージに向けて、これまでとは道を踏み出した選手もいます。ここではBTテーブスヘッドコーチと、宮澤夕貴選手に2022-2023シーズンを改めて振り返ってもらい、来るべき2023-2024シーズンへの思いを聞きました。

 

BTテーブスヘッドコーチ シーズン終了インタビュー

 

――今シーズンを終えて3週間が経ちました(取材は4月下旬)。その間、ヘッドコーチはどのように過ごしていましたか?

BT 最近はゴルフばかりしていました(笑)。クォーターファイナルが終わって1週間ぐらいは、考えないようにしても今シーズンのことばかりが頭に浮かんできて、来シーズンはどうしようかと考える日々でした。そんな日々が続いていたので、別のことを考える意味でもゴルフをしていたんです。

 

――Wリーグのセミファイナル、ファイナルは見ましたか?

見ました。ファイナルに出場した2チームはよく頑張っていましたね。特に第3戦は2回の延長戦にまで入って、最後の最後までどちらが勝つかわからないゲームでしたから、ファンのみなさんにとっては面白いゲームだったと思います。ただ私はコーチですから、ファンの方とは見方が異なります。負け惜しみに聞こえるかもしれませんが、レッドウェーブにもファイナルに立つチャンスは十分にあったのではないかと思っていました。

 

――今シーズンのレッドウェーブを振り返ったとき、どうしても怪我が付きまといます。それを抜きにして考えたとき、どんなシーズンだったと言えますか?

BT 怪我を抜きに考えることは難しいですね。私たちが「落とした」と言える試合は山梨クィーンビーズ戦だけです。あのときは全員がいましたし、前日の修正もしっかりしましたから言い訳の余地はありません。一方で山梨がとてもいいバスケットをしていたことは認めなければいけません。シュートに対して手を挙げても、彼女たちはシュートを決めてきましたし、彼女たちのオフボールのアクションを私たちが守れなかったという反省もあります。また私たちのどこかに気の緩みがあり、それが最後焦りになったという側面もあるでしょう。だからあのゲームを落としてしまったんです。今後の大きな教訓になります。

――その後は、やはり怪我がチームに影響を与えたと。

BT はい。山梨戦の負けがあっても、すぐに切り替えられると思っていました。しかしその後にアース(宮澤)がケガをしてしまいました。その前のシーズンと比べると、今シーズンの序盤は試合に勝ち切るという部分が向上していたと思います。特に最後の5分、ハーフコートオフェンスとディフェンスをしっかり遂行できていたという点において、アースはとても大きな存在だったのです。そのアースがいなくなったわけですから、他の選手にも動揺はあったと思います。もちろんルイ(町田)もリーダーシップを取れる選手ですが、アースは“オンザコート・コーチ”なんです。オフザコート・コーチ(BT)とオンザコート・コーチ(宮澤)の2人がいるチームは、古今東西、いろんなチームを見ても強いことは明らかです。その一方が急にいなくなるのですから、チーム作りにずれが生じたのは事実です。

 

――そのなかでステップアップした選手もいます。

BT そうですね。アースの欠場によってマナ(田中)やニニ(中村)、アキ(藤本)が入って、彼女たちが活躍してくれたことはプラス材料でした。もちろん彼女たちとアースとではプレースタイルが異なるので、チームとしてのスペーシングに問題は生じましたが、マナ、ニニ、アキを始めとし、いろんな選手が頑張ってくれました。

――パフォーマンス面での課題は何かありますか?

BT 今シーズン、最も大変だったことは3ポイントシュートを決めきれなかったことです。レッドウェーブがハーフコートオフェンスで重視しているのは3ポイントシュートです。もちろんその確率はゴール近辺のシュートに比べると低くなります。それでも近年はシーズンを通して35~36%を決めていました。それが今シーズンは27.7%です。もちろん選手たちはどんどん打ってくれました。試投数はリーグのトップです。でも入らない。終盤の負けが続いたときは確率が20%にも届いていません。

 

――レッドウェーブの武器にはチームディフェンスもあります。

BT もちろんです。ディフェンスに関しては選手たちもよく頑張ってくれました。チームのスタイルは変わっていないので、彼女たちもやるべきことをわかってくれています。しかしディフェンスで我慢しようという時間があまりにも長すぎました。それだけではメンタルのダメージが蓄積されてしまいます。あれだけディフェンスをやっているのだから、もう少し簡単に点を取ろうと考えましたが、トランジションオフェンスを除くと、20%以下の3ポイントシュートのとき、誰がペイントエリア内のシュートを決めるでしょう?オフボールのカッティングを得意とする選手が引退し、ペイントエリア内でパワーを発揮する選手も抜けました。そのうえで怪我人が続いたら、その答えは簡単ではありません。

――これからのオフシーズンでじっくり考えると思いますが、現時点で来シーズンどんなことをやっていかなければいけないと考えていますか?

BT 移籍選手がどうなるかにもよりますが、メンバー構成は変わるでしょう。それでも基本的なオフェンスシステムは変えないつもりです。そのうえで今までのディフェンスをもう少し積極的にして、リーグナンバーワンのトランジションオフェンスの回数をさらに増やしたいと考えています。ハーフコートオフェンスについては、今シーズンから5アウトのスペーシングを取り入れ、アナリティクスはすごくよかったのですが、先ほども言ったとおりフィニッシュ、特に3ポイントシュートの確率は大きな課題になるでしょう。そうした今シーズンの収穫と課題を踏まえたうえで、来シーズンは優勝できるチームにしていきたいと考えています。

 

 

宮澤夕貴キャプテン シーズン終了インタビュー

 

――シーズン終わって3週間(取材は4月下旬)が経ちました。この3週間どんなことをしていましたか?

宮澤 リフレッシュしながらもずっと体は動かしていましたね。シーズン中に怪我でプレーできなかったこともあって、自分自身が燃え尽きていない感じがあったんです。次のシーズンに備えたいという思いもありますし、あとはバスケットの感覚を取り戻したいという気持ちもあって、ずっと動いていますね。

――敗戦後におこなわれたセミファイナル、ファイナルは見ましたか?

宮澤 見ました。ただ、自分がそこに立っていたら……とは感じなかったですね。今シーズンは悔しいことに早い段階で負けていたので、どちらが勝つんだろうと第三者の目で見ていました。どれも本当にすごい試合で、今までにない盛り上がりを感じました。それはWリーグとしてもとても良いことだと思いますし、各チームが切磋琢磨できているなと感じました。だからこそ、なおのこと、私たちもあの場に戻りたいなと思いましたね。

 

――改めて今シーズンを振り返ったとき、チームとしてはケガに苦しんだシーズンだと思いますが、あえてそのケガを抜きに考えると、どんなシーズンだったと思いますか?

宮澤 若手と中堅がすごく頑張ってくれて、チームとしての層が厚くなったと感じています。前のシーズンまでは基本的なローテーションがほぼ決まっていましたが、今シーズンは今まで試合に出ていないメンバーが活躍したり、私のポジションで言えば、マナ(田中)がすごく頑張ってくれたり……結果としてマナは現役を退きますが、それ以外のメンバーもこれからが楽しみで、新しい富士通を見せることができたのかなと感じています。

 

――見えてきた課題もありますか?

宮澤 やはり決めきる力ですね。私たちは3ポイントシュートの精度が落ちるとプレースタイル的に難しい部分があります。レイアップシュートも含めてですが、決めきる力はレッドウェーブの課題です。また今シーズンは試合中にアジャストができなくて、最後の試合を含めて、ずっと同じパターンでやられている印象があります。試合後にビデオを見ながら「こうしたらよかったね」という反省はできるんですけど、プレー中に選手同士でアジャストができませんでした。課題と言われてきたリバウンドに関してはかなり改善されてきていますが、勝負どころでの強さはまだまだです。スタッツ上は悪くないのですが、ファイナルに出場した2チームのような勝負どころでの強さも課題です。「シュートの決定力、アジャスト、勝負どころでの強さ」。これは克服すべき課題だと言えます。

――宮澤選手自身にとっては、怪我と切っても切り離せないシーズンでした。改めてご自身の今シーズンをどう振り返りますか?

宮澤 個人的には開幕して結構調子がいいほうだったんです。でも調子がいいときほど怪我をしやすいんだなと、改めて思いました。ただでさえコートに立てないことが歯がゆくて、しかもキャプテンだったので、なおのことそう思っていました。それでもコートの外から客観的にチームを見ることができて、アドバイスがしやすくなったとは思います。チームとしての良かったところ、悪かったところがすごく明確になったことは、苦しいシーズンでも個人的な収穫と言えるかもしれません。

――最後に2023-2024シーズンに向けて、今思い描いていることを聞かせてください。

宮澤 細かい部分を変えていかなければいけないと思っています。考え方や練習の取り組みに甘い部分が見えても、これまでは「この人はそういう考えだから」と見過ごしていたところがありました。それぞれみんな大人ですからね。でもそうした甘さが試合に現れるんだと改めて感じて。それを1から変えていければいけないなと思いました。年齢差も含めて、いろんなことを考えすぎて、あまり言いすぎないようにしていましたが、次のシーズンに向けてはそれでは駄目だなと。ファイナルの壮絶な試合を見たからこそ、このままでは勝てないなとすごく感じたので、そういうところから変えていきたいと思います。それを伝えることこそが、私がレッドウェーブに来た意味なのかなと。