2025-26シーズン終了インタビュー
ヘッドコーチ 日下光

――まずは今シーズン(2025-26シーズン)の総括をお願いします。
日下 目標であった皇后杯の連覇とWリーグの三連覇ができず、悔しい終わり方になってしまいました。責任を感じる一方で、来シーズン以降につながる負けだったとも感じています。シーズンを通して、うまく波に乗りきれないなかでも、最後に自分たちの形が見えてきていたので、私自身はポジティブな終わり方だったと思っています。

 

――アシスタントコーチを8年経験し、今シーズンからヘッドコーチに就任しました。どのあたりに難しさを感じられていましたか?
日下 ヘッドコーチが変わればチームのスタイルも変わるものです。ただ私はレッドウェーブで8年間、アシスタントコーチを経験してきましたし、プレースタイル自体は大きくは変えなかったつもりです。しかしプレーの細かいニュアンスや指示の内容、情報量、声掛けひとつをとっても、やはりBTテーブス前ヘッドコーチとは違います。そこに選手たちが戸惑いを感じていたところはあったと思います。私自身は選手やアシスタントコーチの意見を聞いて、自分の考えを整理していくコーチングスタイルなのですが、今シーズンはそうした人たちの意見を聞きすぎてしまった。そこがなかなか波に乗り切れなかった要因ですし、私自身の大きな反省点です。

 

――それでもプレーオフの出場権を勝ち取って、そこではレッドウェーブらしいバスケットが戻ってきたようにも感じます。
日下 それが先ほど言った「私たちの形が見えてきた」点、端的に言えばディフェンスです。今シーズンはディフェンスでずっと安定しないことで苦しんできました。それをプレーオフ前の1ヶ月間で、やや曖昧になっていたところをハッキリとさせて、フォーカスした結果、すごくいい方向に進めることができました。そこで改めてレッドウェーブはディフェンスから入るチームなのだと考えさせられました。

 

――ヘッドコーチとしてハッキリと伝える難しさがあったのでしょうか?
日下 はい。私は、バスケットボールにおいて、何をするにしても唯一の正解はないと考えています。ただ今シーズンを通して、ヘッドコーチの発する言葉は正解にしなければいけないことを痛感しました。その責任の重さはアシスタントコーチのときとはまったく違います。頭では理解していたつもりですが、それを痛みとともに経験できたことは、今後につながると思いますし、つなげなければいけないと思っています。

 

――ヘッドコーチとして経験を得られたこともそうですが、チームとしても得られたものはあると思います。
日下 もちろんです。先ほども言ったとおり、ディフェンスでアグレッシブであることがレッドウェーブのバスケットだとチーム全体で再認識できたこともそうですし、選手個々を見ても大きく成長してくれました。たとえば#0アオイ(山田)はルーキーシーズンでありながら、#10ルイ(町田)のバックアップを務めてくれました。本人には「ルイを追い越すつもりでやらなければダメだよ」と伝えていて、彼女自身、相当なプレッシャーがあったと思います。そのなかでよく成長してくれました。#2マホ(林(真))もサマーキャンプ以降、プレータイムの有無に関わらず、日々の取り組み方が変わり続けたところは、私にとって今シーズンのうれしいことのひとつでした。彼女たち以外の選手も強みを発揮しようと努力してくれましたし、来シーズン以降につながるはずです。

 

――ベテラン勢はどうですか?
日下 改めて#10ルイと#52アース(宮澤)の存在感の大きさに触れることができました。特にプレーオフ・セミファイナルで、結果としては敗れてしまいましたが、チームを勝ちに導こうとする2人の力はレッドウェーブの大きな強みのひとつです。

 

――もうひとつ今シーズンのトピックスを挙げるとすれば、リーグ全体で外国籍選手が増えました。その難しさをどう感じていましたか?
日下 昨シーズン(2024-25シーズン)までのレッドウェーブのアドバンテージとして、#8テミ(テミトペ)の存在がありました。やはり彼女の高さは大きな武器ですから。ただそれが今シーズンは全チームに外国籍のビッグマンが加わったことで、大きなアドバンテージにはならなくなった。シーズン前は外国籍選手の加入がどこまで影響するのだろうかと未知なところはありましたが、実際に始まってみると意外と大きく変わるものだなと感じました。来シーズン以降、どのような対応していくかを、しっかり準備しなければなりません。

 

――結果としては悔しい結果に終わりましたが、ヘッドコーチとして初めてシーズンを通して戦いました。レギュラーシーズンの結果は16勝12敗の3位です。最終的な順位だけでなく、レギュラーシーズンを戦うことで得られたものがあれば教えてください。
日下 Wリーグがプレミアとフューチャーの構成になって2年目で、しかも外国籍選手も各チームに入ってきて、連勝する難しさを、それまでのシーズン以上に感じていました。その中でどういうことにフォーカスしていけばいいのかを、今シーズンはずっと考えていて、自分たちがどうあるべきかがすごく大切になってくると感じました。つまりは自分たちの強みを理解したうえで、相手の強みに対応していくことです。加えて、メンタル面でのマインドセットもとても大切になります。力が拮抗するなかで、いかにマインドセットを保つか。簡単なことではありませんが、そこで相手にフォーカスするよりも、繰り返しになりますが、自分たちがどうあるべきかにフォーカスする。そのほうが高い状態を保ちやすいと思うので、来シーズンはそうしたことも選手たちと共有しながら、よりよいシーズンにしていきたいと思っています。

 

――では最後に、今シーズン、チームとともに戦い、悔しい思いをした、それでいて最後まで応援してくださったファンのみなさんにメッセージをお願いします。
日下 9月のパク・シンジャカップを含め国内外の遠方の地まで、いつも必ずレッドウェーブのウェアを着て、応援に来てくださっていることは、選手もそうですし、我々コーチ陣も毎回気づいています。それだけでも本当にありがたいと思っていますが、そのうえ声援を送ってくださることは、私たちにとって大きな力になっています。今シーズンはチームが波に乗れず、ファンのみなさんも苦しい、悔しい、歯がゆい思いをされたと思います。それでもなお応援に来てくださる方の数が減ることはなく、むしろ私の中で増えてきていたように感じていました。苦しいときだからこそ、レッドウェーブをもっと後押しをしようというファンのみなさんの気持ちや行動は、私たちにとって大きな誇りです。私たちは自分たちの悔しさだけでなく、みなさんが味わった悔しさも背負って、来シーズンにぶつけられるよう、よりよいチーム作りをしていきます。そして来シーズンはみなさんと一緒に、素晴らしい景色を見られるように準備をしていきますので、引き続き、富士通レッドウェーブの応援をよろしくお願いいたします。