2025-26シーズン 開幕前インタビュー
ヘッドコーチ 日下光
――7月下旬のサマーキャンプ以降、チームはどのようなことに取り組んできましたか?
日下 主にディフェンスです。サマーキャンプの反省点である基本的なところ、具体的に言えばボールマンプレッシャーやディナイ、ポジショニングに至るまでディフェンスの基本的な部分の立て直しをしました。オフェンスについては、サマーキャンプに出場していなかったベテラン選手も加わったことで、チームとしての動きを確認しながら練習をしていました。
――その成果でしょうか、パクシンジャカップを2連覇しました。パクシンジャカップをどのように振り返りますか。
日下 パクシンジャカップでは、普段は対戦することのない韓国やスペインのチームと対戦したわけですが、相手への対策というよりも自分たちのバスケットをいかに遂行できるかがポイントになると感じました。強みにしたいディフェンスは、通用するところもありましたし、改善すべき点も見つかりました。さまざまな発見があったという点において、とても収穫のある大会だったと思います。
――今おっしゃった収穫と課題はどのあたりにありますか。
日下 収穫はペイントアタックの比率が増えたことです。昨シーズンまで、どちらかといえばビッグマンのペイントアタックの割合が多く、スモール、つまりはサイズの小さい選手のペイントアタックが少なかったんです。しかしパクシンジャカップではスモールの選手が積極的にアタックしてくれていました。その要因として#11シィ(前澤)の得意とするカッティングの動きでペイントエリア内に進入していたことが一つ挙げられます。この動きがレッドウェーブの強みでもあると再認識できたので、そこはとても大きな収穫です。一方で、ディフェンス面と、リバウンドが取りきれない場面がいくつかあったので、そこは課題点です。
――前回の今シーズン始動のインタビューでは、若手の意識を高めたいとも言及されていました。その点はいかがですか?
日下 全員の意識が上がるのが理想ですが。最近特にそれを感じるのが#0アオイ(山田)と#2マホ(林)です。たとえばゲームの前のウォーミングアップでも、これまでは2人で同じアップをしていたのですが、最近は個々で自分に合った試合への準備の仕方をしてくれています。試合でも、チームとして重要視しているディフェンスで、アオイはボールマンプレッシャーをかけてくれて、マホについては改善の余地こそありますが、それに対して真摯に向き合おうという姿勢がはっきりと見えました。2人のステップアップはシーズン開幕に向けても大きな収穫と言えます。
――#0山田選手ついては、ポイントガードとして#10町田選手のバックアップとして育てていきたいという話もされていました。
日下 はい。でもアオイには「ルイ(町田)のバックアップとして使いたいわけではない。あくまでもルイからポジションを奪うつもりでやってほしい」と伝えています。その言葉が響いたのか、プレー面でも自分から「こうしてやろう」という気持ちが見え始めています。実際にはベンチスタートで試合に出ることがほとんどだと思いますが、自分の役割を理解しつつ、なおかつ彼女自身の強みである激しいディフェンスから、自分のリズムをつかむようなプレーがすごく増えてきたなとは感じています。
――パクシンジャカップでは、#18藤本選手がMVPを獲る活躍をしていました。彼女のMVPに相応しい活躍をどのようにご覧になりますか。
日下 #18アキ(藤本)にも「パクシンジャカップは、アキにとって自分をアピールする絶好のチャンスだからね」と伝えていました。#8テミ(テミトペ)が出場できないことは、チームとしてはマイナスの部分でもあったのですが、アキの強みであるダイブやカッティング、何よりも「ポテンシャルのある、動けるセンター」であるところは、私自身が強く感じていますし、その彼女らしさを存分に発揮してくれたと感じています。本人の自信にもなったと思いますし、チームとしてもよりよい方向につなげていけたらと思っています。
――チーム全体としてのバランスが整ってきているようにも見えました。
日下 チーム全体としてのバランスはすごく良くなっています。ただパクシンジャカップで課題として挙げたのがターンオーバーの質です。数ではなく、内容として少し悪いところがあったので、そこはFIBA Women’s Basketball League Asia(WBLA)2025を含めて、開幕までのチームとしての課題です。
――Wリーグについては、3連覇がかかっているシーズンになります。もちろん皇后杯の連覇もあります。それらの目標を達成する上でのカギは、リバウンドやターンオーバーの質になりますか?
日下 そうですね。でも、まずは全員が良いコンディションでシーズンに臨むことです。長いシーズンを戦っていく上ではコンディショニングが一番のポイントになると思っています。選手自身もそうですし、コーチ陣、トレーナー陣とも密に連携をとりながらやっていきたいなと思っています。そして、今のままのバスケットをやって優勝できるかといえば、それほど簡単なWリーグ プレミアではありません。レギュラーシーズンであっても、そのなかでステップアップできるようなシーズンにしたいと考えています。それは私自身にも言えることです。実際にパクシンジャカップでは私なりにいろいろな工夫を施しました。私自身も選手やチームと一緒に成長できるようなシーズンにしていきたいと思っています。
――ファンの方々は新体制のレッドウェーブにも期待を寄せています。最後にシーズン開幕前の、今シーズンの意気込みをお願いします。
日下 もちろん目標としてはWリーグの3連覇と皇后杯の連覇、つまりは勝つことです。しかし私としてはもう一つ、試合を見に来てくださったみなさんが「富士通レッドウェーブのバスケットってこうだよね」「楽しいよね」「また応援に来たいよね」と言っていただけるようなバスケットをしたいと思っています。そのためには、試合で勝つこともそうですが、ベンチの雰囲気であったり、選手たちの活気あふれる表情だったり、またヘッドコーチである私自身も、そうした選手たちの、のびのびとしたプレーをサポートできるような立ち居振る舞い方をしていきたいと思っています。
――それは日下ヘッドコーチがプロの選手として何年間もやってこられて、ファンの大切さや、後押しされる大切さを感じてきたことも影響しますか?
日下 その経験は大きいですね。パクシンジャカップのときも、韓国での開催にも関わらず、最前列でレッドウェーブのユニフォームや、選手の名前が入ったシャツを着て応援してくださる方がたくさんいらっしゃいました。カメラ片手に応援してくれる方もいれば、大きな声を出してくださる方もいました。それらを目の当たりにしたとき、応援されることは当たり前ではないと、応援される我々が強く感じていたんです。私たちが富士通レッドウェーブを応援してくださる方々に喜んでいただくためには、勝つことはもちろん、それプラス、コート内外での立ち居振る舞いや、良い表情でバスケットをすることが必要だと思うので、2025-2026シーズンは、みなさんにお見せするチームの雰囲気も大切にしていきたいなと思っています。
今シーズンもみなさんと共に頂点を目指して戦っていきたいと思います。
温かいご声援をよろしくお願いいたします!