2025-2026シーズン始動インタビュー HC日下光

――まずはヘッドコーチを引き受けるに至った日下HCの思いを聞かせてください。 

日下 私自身、いつか、どこかでヘッドコーチをしたいという思いもありましたし、ここ数年はアシスタントコーチでいながら、自分がヘッドコーチだったらこう決断するだろうなというイメージを持って、過ごしていましたから、打診を受けたときに断る理由が何一つ見つかりませんでした。率直に嬉しかったですし、同時に責任重大で身の引き締まる思いでした。 

――2025-26シーズンのレッドウェーブをどのようなチームにしていきたいと考えていますか? 

日下 レッドウェーブは誰か1人の選手に頼ることなく、全員で遂行するチームバスケットが持ち味ですそのスタイルは継続していきたいと思っていますそのなかで選手個々はもちろんのこと、チームの強み私はそれをソリッド(強固)なディフェンスだと思っていますが、その強みを生かすようなバスケットを展開していきたいと考えています。 

――基本的なバスケットスタイルは踏襲するとのことですが、そこに日下HCが付け加えたいものはどういうものになりますか? 

日下 私自身がチームの課題と感じていたのが「タイムマネジメント」です。たとえば、ラストプレーで何を選択するのか。残り時間を見ながら選手たちがよりよい判断をする、ベンチがよりよい指示を出すといった点を今年はより強化していきたいと思いますタイムマネジメントを考えられるようになりよりよい判断ができるようになれば、レッドウェーブはもっといいチームになります。 

――戦略戦術もさることながら、バスケットに対する考え方をより深めていきたいというわけですね。 

日下 そうです。タイムマネジメントに加えて、ディフェンスについても、チームのコンセプトがあるなかで、これまでよりも分解練習を増やして、細かく指導していきたいと考えています。たとえばクローズアウトの出方ひとつ、ピック&ロールに対する守り方についても、徹底しているところです。 

――分解練習を増やして、細かいところを指導する意図はどういうものですか? 

日下 誤解を恐れずに言えば、昨シーズンまではスタメンとして出ている選手と、ベンチスタートの選手に力の差がありました今シーズンはその差を埋めていく、全体的なステップアップが大きなテーマのひとつです。そのためにもまずは細かいところを、細かく指導していきたいと考えています。練習時間の使い方も、これまではみんなでバスケットをして、みんなでウェイトトレーニングをしてという流れでした。しかし今は2~3人でグルーピングをして、一人ひとりに指導の時間を割けるようにしています。 

――お話を伺っているとヘッドコーチとしての責任感を強く感じます。そのあたりは日下HCも強く感じているところですか? 

日下 はい。練習だけを切り取っても、昨シーズンまでとは見える景色がまったく異なります。もちろん私らしく、ポジティブな声掛けは継続しているつもりです。ただヘッドコーチだからと言って、何を言ってもいいとは考えていません。逆に、何を言わないかをすごく重要視していて、特に今は選手たちにステップアップしてもらいたいので、より考えさせるために何を言わないかをすごく意識しています。 

 

――シーズン開幕に向けての課題はどこにありますか? 

日下 今は各カテゴリーで日本代表活動に参加している選手が合流していないなど、チーム全員で練習ができておらず、若手や新加入のメンバーが中心になって練習をしていますが、その選手たちの意識がまだまだ足りていません。昨シーズン、2冠を達成したことで新しいシーズンは追われる立場になります。そのなかで結果を出そうと思えば、昨シーズンのチームを超えるチームにならなければならないのです。そのためには今、練習に参加しているメンバーに自分に厳しく、加えてリーダーシップを発揮してもらいたいです 

――6月に加入した2人、前澤澪選手と佐藤華純選手はいかがですか? 

日下 佐藤は自分自身をプッシュできる、つまり努力できるタイプの選手で、本当に練習から頑張ってくれています。チームにも早く慣れようとしていますがもう少しリラックスすることも教えてあげたいと思っています。前澤に関しては経験もありますし、一度引退した後に戻ってくるという覚悟もあると思うので、そういう姿を若手に見せてほしいと伝えました。ブランクがあるので、本人は焦りもあるようですが、それについては私たちも十分に理解しています。そのうえで彼女らしい力強いカッティングや、リーダーシップに期待しています。 

 ――2人はシューティングガードですよね。そのポジションの争いが熾烈になりそうです。 

日下 そうですね。彼女たちにはプレータイムを勝ち取るために競争してもらいたいと思っています。それは昨シーズン活躍した赤木(里帆)も、ケガから復帰した林(咲希)も、林(真帆)など若い選手たちも同じです。現時点でスタメンは誰ひとりとして確定していません。ただ、レッドウェーブではシューティングガードとスモールフォワードに求めるプレーの違いがあまりないので、シューティングガードが同時に2人出ることもありえます。サイズは小さくなりますが、機動力を使ったバスケットができると思いますし、なによりレッドウェーブのシューティングガードは個性豊かな選手たちばかりなので、相手にとっては脅威になるのではないかと思っています。 

――ポジションについて言えば、ファンのみなさんが最も気になっているのはポイントガードではないでしょうか? 昨シーズンは江良萌香さんが務めた町田瑠唯選手のバックアップがどうなるかについても、構想を聞かせてください。 

日下 まさにそこは今シーズンのテーマのひとつです。赤木(安江沙碧梨、ルーキーシーズンを迎える山田(葵)がどのように出てくるか。ただ赤木と安江については先ほどのシューティングガード争いに加わることも考えられるので、現時点では山田期待をしています。彼女はディフェンス力も高いですし、町田とは異なるタイプとして流れを変えられる選手だと思っているので、彼女を成長させたいとは考えています。  

――今シーズンのスローガンが「挑  –CHALLENGE-」ですが、これは日下HCが考えたのですか? 

日下 はい、私がまず3つほど候補を考え選手たちにも意見を聞いたうえで、「挑CHALLENGE」にしました。もちろんそれはリーグ3連覇と皇后杯連覇、つまり2年連続の2冠に「挑」むという意味です。先ほど「追われる立場」と言いましたが、私たちは王者というよりも、まだまだ貪欲なチャレンジャーです。その貪欲さこそがレッドウェーブの良さでもあります。よりよくなるために、高みを追い求めて、チャレンジしていきたいと考えています。 

 

 

――では最後に新ヘッドコーチに就任した日下光さんから全国のレッドウェーブファンへ、メッセージをお願いします。 

日下 いつも応援をありがとうございます。新体制になりましたが、バスケットのスタイルとしては昨シーズンとほぼ変わりません。そこに、今シーズンならではの要素を加えることでチーム全員で連動しながら、個々の強みを発揮できるバスケットを展開していきます。そのなかで選手たちが成長していく姿にぜひ注目していただきたいです加えて、レッドウェーブの良さは、みんながいつも楽しく、笑顔で、ポジティブにバスケットをするところです。そこも変わらず見てもらいたいですし、「これが富士通のバスケットだよね」、「また見に行きたいよね」と言ってもらえるようなバスケットをしていきますので、昨シーズンと変わらず……いえ、昨シーズン以上に応援していただけたらと思います。今シーズンも富士通レッドウェーブをよろしくお願いいたします。