【BTテーブス 2023-2024シーズン終了インタビュー】

いつも富士通レッドウェーブに温かいご声援を賜りありがとうございます。

2023-2024シーズン、“Wリーグ優勝“という結果を決めたあの激闘から約1か月が経ちます。
BTテーブスヘッドコーチに、2023-2024シーズンを改めて振り返ってもらい、来るべき2024-2025シーズンへの思いを聞きました。(取材日:4月30日)

――優勝した翌日から今日までどのように過ごしていましたか?
BT 取材がいくつかありましたが、それ以外は家にいたり、1時間ほどの散歩をすることが多かったかな。私は頻繁にSNSを見るタイプでもないのだけど、ここ数日少しSNSを見たときに、ようやくレッドウェーブが勝ったんだって実感しているところです。ただし、今でもまだファイナルの映像は見返していません。

――ご家族の反応はいかがでしたか?
BT みんな、すごく嬉しかったみたい。正直なところ、私はその反応を全然予想していなかったけれど、やはり家族が今までの経緯を一番理解してくれています。特に海(長男/B.LEAGUE・アルバルク東京所属)は優勝することの難しさを知っているから、レッドウェーブが優勝してから会話が変わりました。いろんなことを聞かれます。「このときどう思っていたの?」、「なぜこのセットプレーを使っているの?」、「(コーチとしては)何を一番大切にしているの?」と。

――海さんがそうしたことを聞いてくることは今までにはなかったことですか?
BT なかったですね。私がレッドウェーブのヘッドコーチをしていることは知っているけど、以前はルイ(#10町田)やシィ(レッドウェーブOG・篠崎澪さん)などの話をしても、「ああ、彼女ね」くらいの反応でした。海はB.LEAGUE・宇都宮ブレックスで優勝の経験があるから、父親(BT)のことはそこまでいいコーチだと思っていなかったんじゃないかな(笑)。今まで3回ファイナルに行きながら、いずれも負けていますから。でも本当に今シーズンはプレーオフに入ってからも、海からレッドウェーブのことを聞いてくるなど、そうした話が増えました。

――いい家族ですね。さて、あらためて16シーズンぶりに優勝できた要因を聞かせてください。もちろん1つではないだろうけど、あえて1つ挙げるとすれば。
BT いろんな選手がコミュニケーションの良さを挙げています。私もそう思いますが、さらに私が強調したいのは練習の環境が変わったことです。環境が変わったとは、場所や設備などのことではなく、練習における“競争”環境がしっかりできていたことです。正直に言えば、内容的によくない練習はたくさんありました。でも選手たちの努力に目を向ければ、よくないと感じた練習は一度もありません。だから先に言いますが、来シーズンの勝負所は今シーズン以上の競争環境を作って、努力ができるか、です。それは選手だけでなく、スタッフも含めて、そう言えます。

――なぜそのような競争環境が生まれたのでしょう? メンバー的に大きく変わったのは林咲希選手の加入くらいです。大きな戦力ではありますが、彼女の加入だけでガラリと変わったと?
BT いや、私がこれまでもずっと言ってきたことがやっと実を結んだのだと思います。私は「空気を潰せる人」です。私は練習が駄目だったらもう駄目だとハッキリ言います。チームの雰囲気やチームケミストリーも大切にしていますが、その前にやるべきことをしっかりやらないといけません。選手たちにも言い分はあるかもしれないけど、やはりチームの一員として体育館にいる以上、その時間を無駄にしてはいけないと思うし、それをずっと言い続けてきました。そうして「空気を潰す」ようなことをしつこく言ったときに、周りのスタッフが潰れた空気をよくするためにいろいろとフォローしてくれました。そういう意味でいえば、勝因の1つとして、スタッフ全員がセイムページになれていたことも挙げられます。

――確かにプレーオフの記者会見で何度かアシスタントコーチの貢献についても語っていました。
BT そうですね。やはり現代のバスケットでは彼らのようにしっかりとゲームを分析できる人が必要です。彼らは本当にずっと相手チームの映像見て、スカウティングをしてくれます。練習メニューを決めるのは私の役割ですが、その組み立ても、彼らがスカウティングをして、「コーチ、この試合ではこの戦術にフォーカスしましょう」などと言ってくれることで、よりスムーズになりました。彼らの貢献はそれだけでなく、選手個々のスキルアップにも欠かせませんでした。それも練習での競争環境を高める力です。彼らがおこなう毎日のワークアウトは、選手にとっても、チームにとっても、大きく推進力になっています。

――選手間だけでなく、コーチやスタッフも含めて、セイムページになれたと。
BT はい。もちろんアシスタントコーチ2人を含めたスタッフとのミーティングでは、いろんなぶつかり合いもありましたよ。私はけっして“やりやすい”コーチではないと自認しています。アシスタントコーチから意見が上がったときも、意見を言うこと自体はいいのですが、いつも「なぜそれが必要なの? 説明して」と聞きます。その理由が理解できたら、じゃあやってみようと受け入れますが、駄目なら駄目だとハッキリ言います。そうしたぶつかり合いはありました。でもそれはとても大切なことです。ぶつかり合いがあれば、本当にコミュニケーションが良くなります。自分の意見をきちんと説明するために頑張ろうとして、より考えないといけませんから。そうした意見のぶつかり合いを経たことも、今回の結果を得られたひとつの要因だと思っています。

――ヘッドコーチ自身は、選手へのアプローチやスタッフへのアプローチを変えたところはありますか?
BT ちょっと優しくなったかな(笑)。これまでずっと選手たちに「我慢して」、「考え方を変えないといけない」などと伝えてきて、それでぶつかったこともあります。そうした経験をして、自分自身も何か変えなければいけないなと思いました。基本的に私は自分のコーチングやバスケットの知識に自信がありますが、だからこそ、もう少しフレキシブルに選手と接する必要があるのではないかと思ったんです。以前はよく怒ったりもしていましたが、今はフィフティ・フィフティです。そう考えると、優しくなったという表現は間違っているかもしれません。我慢できるようになったかな。それは年齢のせいかもしれませんね(笑)。年齢を重ねて、「あ、このシーン、今までに何回も見たことあるから、もう言わなくていいな」と思えるようになったのかもしれません。

――それで選手たちも変わりましたか
BT 特にベテランの選手は私の性格や、目指しているバスケットをきちんと理解してくれています。だから私が空気を潰すときは、あくまでも私の感覚的にですが、ルイやアース(#52宮澤)、キラ(#25内尾)あたりはわかってくれていて、若い選手たちに「大丈夫、大丈夫。BTはこう考えているから」と、うまく伝えてくれていたと思います。それで助けられた若手もいるでしょう。私自身も若手にもう少し寄り添ったほうがいいかなと思ったこともありますが、やはり私みたいなコーチは、期待しているところをしっかりと伝えたほうがいいし、選手たちもまたそれを理解しないといけないと思うんです。そのバランスを今シーズンは大切にしました。

――来シーズンに向けては、先ほど今シーズン以上の競争環境をつくらなければと言っていました。スタメンはもちろんのこと、ベンチメンバーのさらなるステップアップも欠かせないということですね。
BT そうですね。ベンチメンバーのステップアップは今シーズンも見られましたが、コンスタントではありませんでした。来シーズンは若手がもう少しコンスタントに活躍しなければいけません。試合に絡める選手になるために、オフシーズンとプレシーズンで頑張ってほしい。先日、選手個々と面談をしたのですが、テミ(#8テミトペ)には、プレーオフのベスト5に選ばれましたし、期待するところが大きいから「ピック(=ボールマンに対するスクリーンプレー)のディフェンスでハードショウができるようになろう」と話したたら、「まだまだです」って(笑)。でもそうしたチャレンジが、テミだけでなく、すべての選手、スタッフに必要になってくると思っています。