ニューイヤー駅伝 特別インタビュー第5弾「伊豫田 達弥」

「応援への恩返しは駅伝を走ること。応援を力に変えて走りたい」

2023年4月入社の期待のルーキーが元日の上州路でもその力を見せてくれそうだ。順天堂大学時代は関東インカレ1部10000m優勝。大学駅伝でもチームを引っ張る存在として注目を浴びてきた伊豫田達弥は入社後、11月の東日本実業団駅伝でも6区(10.6km)で区間賞を獲得。その存在感をアピールし、ニューイヤー駅伝へと弾みをつけている。

■駅伝が好き

11月3日の東日本実業団駅伝では6区区間賞。優勝を決定づける走りに本人は「前の区間の先輩方がいい流れで持ってきてくれた」と謙遜し、「それでも大きな自信になった」と笑顔を見せた。その後の11月25日の八王子ロングディスタンスでも自己ベストに迫るタイムに「天候、レースの流れが良かった。あとは自分のコンディションが良ければ自己ベストも狙えたと思う。それでもあのレースでニューイヤー駅伝に向けて弾みがついたと思います」と徐々に自信と調子を上げている様子だった。

駅伝についての魅力を問われると「自分が走れなかったらというプレッシャーはもちろんあるが、それも魅力で駅伝が好き。普段は個人種目ばかりだが、年に何回かの団体種目なので楽しみ。富士通のたすきには重みを感じる。足を引っ張りたくないという思いが今はプラスに働いている」

大学から実業団に進み、一段階引きあがった競技レベルに恐れおののくことなく、自分自身を高めるための材料として駅伝と向き合っている。

■1年目として順調な滑り出しを見せた今シーズン

「大学時代にトラックでタイムを出せていなかったので、日本選手権に出られなかったのは悔しかったが、東日本実業団駅伝に1年目から出ることを目標にやってきたので、出るだけじゃなく区間賞まで取れた充分な結果だったと思う」

大学生から社会人になり、競技を中心とした環境となったからこそ「日本選手権に出て、そこに出るようなトップ選手と同じ練習をしたかった」と満足はしていない様子だった。

富士通の長距離ブロックには先日10000mで日本新記録を樹立した塩尻和也をはじめ、多くの日本代表が存在する。「富士通というチームは上をみれば強い選手がたくさんいる。だからこそあぐらをかけない。それぞれの分野に自分より秀でた選手がいる」と伊豫田は語る。実業団という世界で強い選手たちに揉まれ、自分の置かれた環境に緊張感を持った言葉だった。それでも環境にはすぐに慣れたというが、「記録を出さなければいけない試合の頻度にはまだ慣れていない」とまだまだ苦労しているところもあるようだ。

「実業団に進んだ同期たちには負けたくない。個人としてもチームとしても」

いい環境下で競技をできているからこそ、それぞれの道へ進んだ大学時代の元チームメイトたちにライバル意識を燃やしている。


ニューイヤー駅伝では群馬特有の強い風が吹く。「向かい風については得意というわけではない。とはいえ苦手というわけでもない。重心の位置に注意しながら風に負けないように走りたい。富士通に入り社員の方々が応援してくださるのは学生時代と似ているようで違う。だからこそよく見られている駅伝では頑張りたい」

持ち前の負けん気でニューイヤー駅伝ではライバルにも強風にも負けない走りを見せてくれそうだ。

ライター:松永大介(富士通陸上競技部OB)