ニューイヤー駅伝 特別インタビュー第3弾 キャプテン「坂東 悠汰」

◆苦しんだ前半シーズン

今季は苦しいシーズンになった。
「狙った大会で思うような結果が出ない」

今年2月坂東悠汰はカザフスタンで行われたアジア室内陸上競技選手権大会に出場した。例年であれば1月・2月に走り込みでベースをつくり、3月にスピードをあげてトラックシーズンに突入していくのが本来の流れだった。しかし今年は2月のアジア室内大会の出場に向けて、ニューイヤー駅伝後すぐにスピード練習に入り、そのままトラックシーズンへと突入した。そのため走り込みができず、スピードは出るが持久力が足りなかったという。夏場に走り込むことを掲げ、普段の練習にプラスしてジョギングを増やし、距離を踏むことを意識した。

夏合宿が終わり、坂東は10000mで27分台を出すことに照準を定めた。

9月の全日本実業団で10000mの記録を狙う予定だったが、スタッフと相談の上、夏合宿の疲労を考慮して全日本実業団はポイント練習の一環として出場し、11月25日の八王子ロングディスタンスをターゲットにした。

全日本実業団から1か月以上を10000mのための練習に費やし、理想に近い練習ができた。自信をもって臨んだ八王子ロングディスタンスではハイペースながら、隊列が安定しない難しいレースとなったが自己ベストとなる27分51秒10を出し、27分台ランナーの仲間入りをした。

「5000mの自己ベスト(13分18秒49)から考えれば27分台はいつでも出せると言われていたが、(27分台で)走らないと自分では27分台ランナーとは思えない。だから27分台を出したときはすごくほっとした」

◆改革の秋、4連覇で終えた東日本実業団対抗駅伝

「正直、今年の東日本は簡単には優勝できないだろうな」
東日本実業団対抗駅伝の直前、坂東は心の中で思っていた。

「夏合宿を完璧に終えられたのはチームで自分だけ、他のメンバーは、1回は必ず離脱していた」

チームで練習をしているはずなのにポイント練習や距離走についていけるメンバーが数人の時もあった。例年行っている記録会での10000m集団走も、今年は隊列が乱れてバラバラになっていった。それでも東日本実業団対抗駅伝4連覇という結果に「東日本実業団対抗駅伝が初駅伝となった椎野修羅や新人の伊豫田達弥に助けられた。ニューイヤー駅伝へのメンバー争いが激しくなった」と若手2人の活躍に胸をなでおろした。

キャプテンとして何かを変える必要があると感じた坂東は、スタッフが立てた練習メニューを一度持ち帰り、選手たちの意見を聞いたうえでスタッフともう一度練習を組みなおすなど、選手側とスタッフとの連携を図った。選手の意見を出せるだけでなく、選手自身に練習への責任感を持たせるため坂東が考えた策だった。

その結果、チームの状況は良くなっていき、中村匠吾などベテラン組の復調もあり、チームとしてニューイヤー駅伝へ足並みが揃い始めた。

ニューイヤー駅伝王座奪還へ

「3年前に優勝した時のメンバーは全員残っている。優勝した時の雰囲気はまだ覚えている。それを若手に伝えれば、優勝出来る雰囲気を作っていける」

過去の優勝経験から、この秋改革を行ってきたキャプテンは、改めて優勝を見据える。
今大会から一部区間に変更が生じたことに対して「キメリは向かい風が得意。富士通にとっては(新4区がインターナショナル区間になったことは)良い区間になったとプラスに考える」
また、本人は後半区間を走る予想もしており、向かい風への苦手意識もないが、「向かい風は(風よけとして)ほかの選手に使われちゃうので・・・」と長身の坂東ならではの悩みに苦笑いをした。
一度優勝を経験しているからこそ負けたくない。王座奪還を目指した前回大会、Hondaに46秒差をつけられ、群馬県庁前で悔しさをにじませた。
「2021年に優勝した時は社員のみなさまにすごく喜んでもらえた。普段の大会報告でもたくさんリアクションをくれて、だからこそ駅伝は期待にこたえたい。前回大会は2位だったからこそ昨年以上に今年は優勝を目指している」

富士通を応援してくれるすべての人のために、富士通は王座奪還を目指す

 ライター:松永大介(富士通陸上競技部OB)