ニューイヤー駅伝 特別インタビュー第2弾「塩尻 和也」

■10000m日本記録更新までの道のり

柏原竜二(聞き手) まずは12月10日の、日本選手権での10000m日本記録おめでとうございます! いまの率直な気持ちはいかがでしょうか。
塩尻和也 優勝と記録更新のどちらも嬉しい結果です。日曜日の試合でしたが、試合が終わってから、たくさんの方から連絡だったりお祝いの言葉をいただいたりしました。いまは奄美市でのチーム合宿に合流して、だいぶ落ち着いたというか、まだ1週間も経っていないのですが、なんだか随分前の出来事のような気分ですね。

柏原 坂東選手も「塩尻選手は同期だけど、いま、一緒に練習したくないくらい調子がいい」と、日本選手権前に言っていました。今季を振り返ってもらって、コンディションはいかがでしたか。
塩尻 今季は全体的に通年で良いコンディションで走れていたと思います。

柏原 塩尻選手と言えば、2019年の海外遠征で9月の試合中に大怪我(右膝前十字靱帯損傷)をして手術されましたが、あそこからよくここまで立ち直ったなというか、手術をしたことを皆が忘れるくらい、本当にすごい活躍をしていると思います。このあたりの「手術」というところに、少し踏み込んで聞いてみたいのですが、ご自身では手術をしてからここかで戻ってくることや、いままでのパフォーマンス以上の結果がでるということを、正直、想像していましたか?
塩尻 そうですね。手術自体は陸上競技の選手では珍しいかもしれませんが、ほかのスポーツ種目ではよくあるというか、そこまで珍しい手術でもなかったです。術後に元の、というか、ある程度走れるようになるまでには時間が掛かったり、今とは全然違う強度(の弱い練習)から始めたりしました。ちょうど2年後の2021年12月(エディオンディスタンスチャレンジ)に、5000mで自己ベストを更新しました。実はその大会までは「このまま自己ベストを更新できないのかな・・・」と不安を持っていた部分もあったのですが、手術をしても、まだまだやっていけるんだなと実感として体験できたので、その後は引き続き競技をやれるという実感を持って取り組んでこれました。

柏原 塩尻選手は学生時代に3000m障害で2016年の国際大会に出場、社会人になってからは今年のブダペスト世界選手権に5000m日本代表として出場しましたが、学生のころと今とでは世界大会に出場するにあたり、何が一番大きく変わりましたか?
塩尻 学生のころと違っていたのは、そうですね、もちろん種目は違いましたが、学生の時は本格的に出場を狙って試合を組み立てていくというよりは結果として出場するチャンスが回ってきて出場できというかたちでした。今年の世界選手権では、自分自身もそうですが、監督コーチと相談して狙いにいった結果としての出場を果たすことができたので、どちらが良いという話ではないのですが、しっかり自分が勝つべきところで勝って、世界大会に出場できたというのは大きな意味があったのかなと思います。

柏原 そこから得たものが今回の日本選手権10000mに生かさましたか?
塩尻 ブダペスト世界選手権では予選でいい走りができずに終わってしまったので、悔しい結果が残りました。そこから来年の国際大会や2025年の東京での世界選手権に向けて、しっかり切り替えていこう、めげずに挑戦していこうと取り組んできたので、来年の国際大会に大きく近づくような結果を出せたことは、練習の成果がうまく出せたのだと思います。

柏原 3000m障害、5000m、10000mと世界大会に3種目で出場できそうな勢いなんですが、塩尻選手は長距離種目をどう捉えていますか?基本的に3000m障害ならそれで目指し、5000mなら5000mで目指す選手が多い中で、オールマイティにこなせる選手というのは、日本国内を見渡しても貴重な存在だと思うのですが。
塩尻 私自身は種目を特定するよりかは、3000m障害も含めてどの種目でも、やるからには上を目指したいというか、しっかり勝っていきたいという気持ちで取り組んでいます。学生の頃と比べてみると、普通は走る種目を絞ったりする傾向が多くはなってくるのですが、私はやはりそれでもどの種目でももっともっと上を目指したい、自分の記録は更新していきたいという気持ちはあります。来年の国際大会は10000mで目指すというのはありますが、機会があれば他の種目もまだまだやりたい気持ちはあるので、取り組んでいければと思います。

■ニューイヤー駅伝では、少しでも自分の走りで勢いづけたい

柏原 もうすぐニューイヤー駅伝があります。12月に10000mを走ってピーキングが難しい点はあるかもしれませんが、塩尻選手にとって、駅伝とは何でしょうか。どんな位置づけがありますか?
塩尻 世界選手権や世界大会の個人としての代表ではなく、駅伝はチームの代表として走るところが大きく違います。普段は同じ種目の競い合うチームの選手たちが、駅伝ではチームのメンバーを組んで、同じ目標に向かって取り組むというのが、そうですね、駅伝とは・・・なかなか言葉にするのは難しいところではあるのですが(笑)

柏原 では、駅伝をどうトラック種目に生かそうと考えていますか?きっぱり分けて考えているのか、トラックに生かそうと考えていますか?
塩尻 複数種目をやるというときによく聞かれるのですが、私自身としてはどの種目もある程度専門性のあるトレーニングをするのですが、どの種目を取り組むにしても、やってきた練習というのは、すべてではないとしても、他の種目に通ずるところはあるかなと思っています。もちろん駅伝のほうにも通ずるものはあると思っています。今回は10000mで良い走りができたので、これまでの積み重ねてきたものを駅伝につなげていけばいいかと思っています。逆に駅伝に向けたトレーニングも来年のトラックシーズンにつながっていけばと思っています。

柏原 ニューイヤー駅伝まで残りわずかですが、意気込みはどうでしょうか。淡々と過ごすのか、駅伝というものに特別な思いがあったりしますか?
塩尻 個人では日本選手権で5000mと10000mで勝てたことは嬉しいんですが、やはり駅伝となると過去に2021年大会で優勝できましたが、それ以降勝つことができていないので、またチームメンバーと力を合わせて優勝したいという気持ちがありますし、今季は調子よく走れているので、少しは自分の走りでチームを勢いづけられればと思います。

柏原 塩尻選手だと、どこでも走れる印象がありますが、どこを走りたいとかありますか?
塩尻 そうですね、走りたいは、なかなか、どの区間も難しい区間ではあるので・・・。コースが変更となるので、全体の区間を見ても前半の区間が追い風を受けてスピード勝負となりそうなので、そこは走ってみたいなと思っています。

柏原 それでは最後にメッセージをいただけますでしょうか。
塩尻 ニューイヤー駅伝ではチームでは優勝、個人では区間賞を目標に取り組んでいます。本番ではしっかりとチームに貢献する走りをしていきたいと思います。毎年優勝候補に挙げられながら2年ほど遠ざかっており、皆さんの応援に応えられるように優勝目指して、良い新年となるように頑張っていきたいと思います。

 

こぼれ話


こぼれ話1「奄美合宿の過ごし方」
塩尻 奄美大島というと観光地のイメージがありますが、合宿なので遊びに行ったり観光することもなく、メンバーとは練習は多少バラバラになることはありますが食事の時は一緒になることがあるので、来年こそは楽しみを見つけたいといった話をしたりしています。練習や食事以外は感染症対策もあるので、部屋で一人で過ごしたりするのが多くなります。

こぼれ話2「ロードで走るのとトラックで走ること違い」
塩尻 競技のことで言えば、陸上競技のトラックと一般のアスファルトの道(路面)とは走りの感覚も違ってきますし、また駅伝はトラックレースと違って一斉スタートではなく、前後と差が空いての各区間ごとにスタートになるので、そういう点でも普段とは違うというか、違った走り方が求められるかなと思います。競技以外の点でいえば、沿道の方からの応援はトラック種目と比べれば、より近くで聞くことができます。見ている方にとっては選手が通り過ぎるのは一瞬かと思いますが、どの選手も名前を呼んでもらえれば気づきますし、走りながらなので、なかなか反応はできないのですが、沿道から名前を呼んでいただければ、選手としてはとても嬉しいです。トラック種目の場合は陸上競技部の個人名の入った公式応援タオルは目立つ(周回ごとに見える)ので、ありがたいです。