ニューイヤー駅伝 特別インタビュー第1弾「高橋 健一監督」
◆東日本実業団駅伝を振り返って
「走った選手はもちろんのこと、控えに入った選手やスタッフ全員が一人ひとり役割を担い、緊張感をもって駅伝に挑めたことはニューイヤー駅伝につながってくる」
4連覇で終えた東日本実業団駅伝を振り返り、高橋健一監督はこう語った。
今年10月15日マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)兼 パリ2024オリンピック競技大会が開催された。全日本実業団陸上競技連合は過密スケジュールを考慮し、MGC出場権を保持している選手が在籍するチームは各地域予選会をゴールすればニューイヤー駅伝への出場権を与える特別処置を発表した。富士通はこの特別処置の対象になっており、東日本実業団駅伝をゴールさえすればニューイヤー駅伝出場の権利を獲得できたのだが、高橋監督は勝負に徹した。
1区から4区を松枝博輝、ベナード・キメリ、坂東悠汰、塩尻和也の代表クラスの強力な布陣で先頭へ、2位と約11秒差でつなぐと、5区にはベテランの横手健が、あっという間にその差を51秒にまで広げた。さらには6区ルーキー伊豫田達弥が区間賞の走りで後続との差をさらに広げ、アンカー椎野修羅が自身初の実業団駅伝を危なげない走りでゴールテープを切った。先を見据えた高橋監督の勝負師としての狙いがはまった。
レース後のインタビューでも高橋監督は「ニューイヤーで勝利するために、チームの士気を高めるためにも、全力で挑み勝利することは大事」と語った。
◆東日本実業団駅伝とニューイヤー駅伝は別物
前回大会での優勝したHondaとの差について、「その時に元気な選手じゃないといけない。うちも元気な選手を出していたし、選手は100%の力を発揮してくれたので何処に差があったかといわれると難しい」と振り返り、続けて「ただ駅伝は前にいればいるほど有利に進められる」と改めて今大会に向けて分析した。
ニューイヤー駅伝では今大会からコース変更があり、従来の2区(8.3)、3区(13.6km)を合算し新2区(21.9km)とし、従来の4区を分割して新3区(15.4km)、新4区(7.8km・インターナショナル区間)となった。
だからこそ高橋監督は距離の延びた2区に重きを置いており「駅伝は流れ。いくらいい選手を後ろに配置しても力を発揮できなければ宝の持ち腐れになってしまう。出遅れることのないようにしたい」と前半の重要性を語った。
今季絶好調の塩尻をはじめ、チーム状態は右肩上がりだ。
塩尻は7月のアジア選手権を皮切りに8月のブダペスト世界選手権、9月のアジア競技大会と日本代表としてこの夏を戦い抜き、12月10日の日本選手権10000mでは27分09秒80の日本新記録を樹立。高橋監督も「今年一番活躍してくれたのは間違いなく塩尻」と評するように抜群の強さでチームを支える。
また「駅伝といえば・・・」と高橋監督が太鼓判を押すのが横手だ。今シーズンはケガに苦しみ夏までレースに出場することはかなわなかったが、東日本実業団駅伝では区間賞の走りを見せた。チームに勢いをもたらす走りに高橋監督は「タスキを待たせれば100%以上の力を発揮してくれる」と熱い信頼を寄せる。
他にも11月25日に行われた八王子ロングディスタンスで27分51秒10の自己記録を更新した坂東をはじめ、ここまでチームを支えてきた中村匠吾などベテラン組の復調もあり、ニューイヤー駅伝に向けてチームの状態も仕上がり始めているという。
「改めてニューイヤー駅伝は優勝したい。東日本実業団駅伝は4連覇できたものの、ニューイヤー駅伝は2年間優勝できていない。後半の選手にいい走りをしてもらうためにも前半から流れを作りたい」
元日決戦。富士通のユニフォームがどのチームよりも先に群馬県庁に帰ってくる姿を高橋監督はイメージしている。
ライター:松永大介(富士通陸上競技部OB)