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4度の手術を乗り越え今季復帰「フィールドで自分を表現したい」

 日本一奪還を目指す2021シーズン。その開幕戦で本格復帰を果たしたのが、ディフェンシブバックの#24田中彰人だ。2013年に入社した田中は、一貫してコーナーバックとしてプレー。初出場を遂げた1年目の春シーズン初戦では、インターセプトを魅せる活躍で、会場を盛り上げた。
 そんな彼は、入社3年目の2015年に、足首の距骨骨挫傷を負い、6年間で4度の手術を乗り越てきた選手だ。今シーズン奇跡的な復帰を遂げ試合に出場した。今回は、そんな田中彰人の想いに迫った。

◾6年ぶりに立った秋季リーグの舞台

「ようやくフットボールができる。その喜びが大きかったです。2019年に4年ぶりに試合に出た時は、ずっとスタッフとして試合の準備をしてきたので、『選手は何をするんだっけって』戸惑ったりしましたが、今回は不安なく、スムーズに試合に入っていけました。プレー内容はまだまだで、自分が思っているようなパフォーマンスは出せていません。もっと精度を高めていきたいと思っています」と、課題を上げながらも久しぶりの試合での感覚はまずまずだったようだ。
 2015年に怪我をした田中だが、当時の思いをこう語る。「2015年のシーズン開幕前に見た雑誌に、同期や後輩は紹介されているのに、自分の名前がなかったことが、奮起材料になったんです。『自分は期待されていない』って、危機感と見返したいという思いが強くなりました。それから、取り組みを変えて調子が上向きました」。

 開幕戦でスターターを務め、充実したシーズンにしようと青写真を描いた矢先、思いもよらないアクシデントに見舞われる。2戦目へ向けての練習中、パスをインターセプトした時にカカトから地面に落ちたことで、『いままで感じたことのない痛み』が走りました。当初は“3週間の安静”で治る見込みだったが、状況は改善せず怪我との戦いがはじまった。

◾3度目の手術が復帰への足がかりに

 シーズンの序盤での怪我が治らず、2015年はシーズンアウト。翌16年1月に手術へ踏み切るが思ったような回復が得られず、17年春に2度目の手術へ。それでも症状は改善しなかった。「最初の手術後は松葉杖で出勤するなど、日常生活もしんどかったです。春になっても痛みが残っていて、どうなるんだろうって焦りが出たのを覚えています。2回目の手術後も、日によって痛みの強さが異なり、練習に参加できるレベルには到底及びませんでした」。その後もリハビリを続けたものの、足への不安は残ったままだった。

 光明が見え始めたのが新たな治療法だった。メジャーリーガーなどが行う再生医療の一種で、これまで日本では足首への治療はできなかったが、それが可能になるとわかったのだ。「『もう少しで日本でも再生医療の手術ができるようになる』と聞いて、それに懸けたいと思いました。2018年の6月に手術を受けると、これまで取れなかった痛みが引き、術後の経過も良好。ようやく、フットボールに向けたリハビリを開始することができました」。
 長いリハビリを経て、翌19年の春シーズンに復帰。しかし、目指していたプレーとはかけ離れたものだった。「4年近くフットボールの練習をしてなかった、ブランクの大きさを感じました。例えるなら、運動会で張り切って、久しぶりに走るお父さんのような感じです(笑)」。
 さらに追い打ちをかけたのが、2度目の怪我だ。同じ距骨骨挫傷をしてしまう。「またかと信じたくない気持ちがありましたが、一度治っているので、少し心に余裕がありました。また頑張るしかないと」。加えて、翌2020年の7月に第一子が誕生することもわかり、「生まれてくる子供に、プレーしている姿を見せたい」という思いも、再度辛いリハビリ生活に立ち向かうことを後押ししたという。

◾今できることに徹したリハビリ期間

 当たり前の話だが、したくてする怪我などない。選手生命に関わるものなら、気持ちが滅入ってしまうのも当然のこと。田中の場合、3年目から長期にわたって戦線離脱。4年ぶりに復帰したものの、思うようなパフォーマンスが出せないまま、再び怪我をしてしまう。それでも前を向き、再びフィールドへと戻ってきた。彼はどんなことを考えていたのか。

「怪我をした当初は、思うように回復せず、フラストレーションが溜まっていました。練習をサポートしていた時も、イージーなミスをする選手を見ると『ちゃんとやれよ』って思ったりして。試合当日は、スタッフとして裏方作業をするわけですが、それも最初から積極的にできたわけではありません。『自分は選手だから』という感覚が強かったのが正直なところです。でも、チームメイトから『怪我は治る、大丈夫』っていい意味で声をかけてもらって、徐々に自分のマインドが変わっていきました。チームが日本一を目指す上で、いま自分にできることは何なのかっと。一人じゃフットボールはできない、スタッフの仕事のありがたさ、すごく恵まれた環境にいることも感じて、極力マイナスに考えることはしないようにしました。また、リハビリ期間が長くなるにつれて、チームに居られることにも感謝の気持ちが強くなりました」。

◾思い切って進めばクリアできることは多い

 長いリハビリ期間を乗り越えられた一番の要因は、とにかく前を向くことだったと振り返る。「怪我をしたことにフォーカスしてしまうと、マイナスばかりが見えてしまう。どんな怪我でも、怪我をした原因があるはずです。例えば体の使い方が悪かったとか。それを見直す機会にすればいい。復帰までの時間で、どうプラスを生み出すか。自分の場合は、フットボールの知識も深まり、身体能力に頼り切ったプレーから、状況に応じて考えて動けるようになっています」と、成長できた部分も少なくないという。

「また怪我をするんじゃないかという不安はゼロではありませんが、そこを考えても前には進めません。フットボールを続けるかどうか、悩むのも同じこと。やってみれば、問題が出るのは当然です。まずは思い切って進むことが大事だと思っています」。

 最後に今後の目標を聞いてみた。
「今季は、昨シーズン5連覇を阻まれた悔しさがあり、日本一奪還が目標です。そこに向けて、自分自身、チームに貢献したいと思っています。また、1試合1試合、思い残すことがないようなプレーがしたいですね。それができれば、今後のやりたいこと、進む道が見えてくると思うんです。思い切りやりきることをテーマに、フットボールを突き詰めていきたいです」。
 再びフィールドに立った#24。怪我でプレーができなかった時間が無駄ではなかった、そのことを今季フィールドで証明してくれるだろう。