角一哲児S&Cアドバイザー、世界基準のチーム強化。「レッドウェーブの選手たちは伸びしろがたくさんある」


今シーズンからレッドウェーブに、強力な助っ人(?)が加入した。試合中、ベンチから少し離れたところでジッとゲームを見入っているスキンヘッドの男性。彼こそが今シーズンからレッドウェーブのストレングスコーチ(正確にはストレングス&コンディショニング「S&C」アドバイザー)となった角一哲児(かくいち・てつじ)さんだ。

現在は、株式会社ニシ・スポーツからの派遣という形でチームを見ているが、レッドウェーブ以外にもテコンドーの日本代表も担当。レスリングにおいては日本代表のストレングスコーチとして2016年の世界大会にも帯同している。

今回は笑顔がステキで、食べることが大好きという角一S&Cアドバイザーを直撃した。

――角一S&Cアドバイザーは、どういう経緯でS&Cコーチになられたのですか?

私の経歴はなかなか面白くて、広島県で高校野球の名門と呼ばれる高校に推薦で入ったんです。しかし高校2年生の終わりごろ、あと8か月くらいで引退というときにトラックに轢かれる交通事故に遭って、バットを振ることさえできなくなったんです。大学に進学したいと思っていたので、学校の先生や顧問に相談して、そこからアメフト部に転部して、大学もそのままアメフトの推薦で入ることができました。大学卒業後はXリーグの五洋建設パイレーツ(現在の明治安田PentaOceanパイレーツ)に入って、プレーしていました。

――Xリーグでプレーしていたんですか? 富士通とは浅からぬ縁ですね

そうですね。そして、現役を引退した後は地元の広島に戻って、おまわりさんになったんです。もともとはトレーニングの仕事をしたかったのですが、当時はまだS&Cコーチはお金にならないと言われている時代だったので、生活をするためにおまわりさんになったんです。でも30歳手前で「これからの人生をどうするかな?」と考えたときに、一念発起して、学校にもう一度通い直し、この道に進もうと決めました。
周囲からは反対されましたが、「必ず世界で活躍できるようなストレングスコーチになる」と言って、警察を辞めたんです。そして2016年に、レスリング日本代表のストレングスコーチとしてリオデジャネイロに行くことができました。

――それがどうしてレッドウェーブに?

私が今所属するニシ・スポーツから声をかけていただいたんですね。その業務提携先として、今シーズンからレッドウェーブを見させていただいています。

――トレーニングの仕方や取り組み方はプレーに表れるものですか?

はい。女性は元々抑制のかかる生き物なんですね。女性アスリートがなぜトレーニングをするかといえば、その抑制を取り払うためなんです。つまりはリミッター(限界値)を外して初めて、女性アスリートは力を発揮できるんです。レッドウェーブを見始めた当初は選手たちのなかにリミッターがあって、そのなかでしか力を発揮していませんでした。ですからそこは間違いなくプレーにも影響します。トレーニングで力を発揮できずに、バスケットだけ力を発揮するなんてことは簡単にできるものではありません。万が一それでも成績が上がるのであれば、よほどの経験とバスケットの技術で補っているだけです。選手たちがリミッターを外すことができれば、今以上に強くなれるということです。

――S&Cコーチの視点から、今後のレッドウェーブの課題は何でしょう?

下半身の強さでしょう。ジャンプ力もダッシュも横方向の動きもすべて下半身から生まれるものですが、その下半身の力を出すときの感覚がまだ少し弱いかなと。でも継続してトレーニングを徹底していけば、来年・再来年あたりにはもっといいチームになっているだろうなという実感はあります。彼女たちには、まだまだ伸びしろがたくさんあります。

――リオデジャネイロでのレスリング選手の活躍を思えば、その言葉が頼もしく感じます

メダルを獲った女子選手を見ているからこそ、レッドウェーブの選手たちにもトレーニングに対する意識を高めてほしいと思うわけです。自己紹介で「レスリングの日本代表を見ていました」と言ったとき、選手たちはたぶん「バスケットとレスリングでは競技が違うでしょ」という感覚があったと思うんです。でも私は以前、日本体育大学のバスケット部に携わっていましたし、私がやっていたアメリカンフットボールとバスケットでは動きが似ているところもある。その視点で言えば、レスリングとバスケットは同じなんです。

――競技特性は違いますが、レスリングもバスケットもフィジカルコンタクトのあるスポーツですし、ストレングスのベースは同じということですか

そうです。もちろん試合時間は異なりますし、体の動かし方も違う部分はあるのですが、基本的な動き、たとえば股関節の使い方だとか、肩の使い方などはすべて同じです。まずはそこができて、そのうえで競技に特化した動きができるか、という話になるんです。

――つまりは現時点のレッドウェーブは、すべてのスポーツに通じるベースの部分もまだ改善点があると

そういうことです。たぶん、そこが彼女たちには抜け落ちているんです。競技に特化した動きについてはスムーズに身につけられると思いますが、それ以前のベースの部分が今はまだ理解できていないと思います。それでも、だいぶん変わってきたと思います。だからこそ絶対に伸びしろがあると思っているんです。もちろんシーズン中の今は、即効性のあるトレーニングに取り組んでいます。ただそれは即効性こそありますが、伸びしろのないものなんです。やがて頭打ちになるので、結局はベースになる部分を伸ばしていかないといけません。もちろんベースになる部分のトレーニングにも取り組んでいますが、それが結果として出てくるのは来年、再来年あたりだろうと思います。本当にこれからが楽しみな選手たちですね。

――最後に少しだけパーソナルなお話を聞かせてください。普段から明るく、チームでも「カクさん」と呼ばれるなど、早くも「いじられ役」という印象があります

基本的に笑顔を絶やさないよう、意識的にしています。体格的にも風貌的にも見てのとおりですから(写真参照)、表情までいかつくなってしまうと、周りからもバリアを張られてしまうんです。人といるときはなるべく笑顔でいることで、周りの人たちも心を開いて話してくれるかなと。

――いい笑顔です。以前、遠征先で小滝ヘッドコーチと食べ物のことで盛り上がっていましたね。食べることは好きですか?

大好きですね。仕事柄、自分の体が名刺代わりみたいなところがあるので、しっかり食べて、空いている時間は自分のトレーニングをしっかりすることは欠かさずやっています。ですから食べることを怠ると体が小さくなるので、食べることも好きになっている、といったほうがいいかもしれませんね。

普段は笑顔で接してくれる角一S&Cアドバイザーだが、トレーニングの話になるとやはりプロの厳しい目になる。話を聞いていて、レッドウェーブにはまだまだ伸びしろがあるのかとワクワクしてきた。

バスケットで求められるフィジカルは一朝一夕でできあがるものではない。選手たちはこれまでも厳しいトレーニングに励んできたが、世界基準を知る角一S&Cアドバイザーを得たことで、彼女たちの身体はさらに世界基準へと近づいていく。それはつまり日本の頂点に近づくということでもある。
頼むぞ、カクさん!

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