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駅伝・マラソントークイベントから(前編)

寄稿:報知新聞社スポーツ報知 記者 太田涼

2019年9月の東京五輪代表選考会MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で優勝し、代表内定した中村匠吾は、2人の恩師と歩み続けている。駒大時代から指導を受ける大八木弘明監督と現在の所属である富士通の福嶋正監督。42・195キロという果てしなく孤独な世界で戦う男は、2人とどんな時間を過ごして高みへ至り、これから何を目指すのか。東洋大時代に箱根駅伝5区で活躍した「2代目・山の神」柏原竜二氏と文化放送・寺島啓太アナウンサーが司会を務め、前述の3人と座談会。まずは原点とも言える駅伝の魅力をひもといた。

 

 三重・上野工高(現・伊賀白鳳高)時代は3年連続で全国高校駅伝に出場した中村。トラックでのスピードはもちろん、勝負強さとロードでの安定感は世代随一だった。憧れである高林祐介の背中を追って平成の常勝軍団である駒大の門をたたいた。

 

 中村匠吾(以下、中村)「情熱のある熱い監督がいるというイメージが強くて、高校時代から憧れていた大学でした。そこで大八木監督に勧誘してもらって、入学できたのはうれしかったですね」

 寺島啓太アナウンサー(以下、寺島アナ)「ここまで26年間、指導されてきて、モットーにしていることなどはあるんでしょうか」

 大八木弘明監督(以下、大八木監督)「毎年ですね、新しい選手が入学しますので、来たときに戸惑う子もたくさんいる。まずは、そこをしっかり育てようと。最初の2年間は駒澤のやり方を教えながら、育成しようという気持ちですね。私の情熱というんですか、本気度をどこまで感じてもらえるかというところも大事。2年生までは1から10まで全部教えて、3年目から自主性に委ねています。考える能力がないと、匠吾のように成長していく選手にならない。3、4年生になったらいろんな考える能力をつけさせる育成している」

ケガなどの影響もあって、中村は1、2年時に思うような結果を残せなかった。だが、練習するだけではない駒澤イズムを確実に受け継ぎ、自分で考えて行動できる選手へと成長。同期である村山謙太(現・旭化成)らの走りに焦りを感じることはあっても、自分の道を見つめ、為すべき事を為していくと、3年目にはユニバーシアード・ハーフマラソン銅メダルを獲得。駅伝でも結果を出し始めた。

 

 大八木監督「匠吾は1、2年の頃、ケガが多かった。中々対応できなかったり、体ができていなかったのにハードなトレーニングをしていた。優勝しないといけないチームなので、気負っていた部分もあったでしょう。私も、個別に見てあげられなかった。少しずつ体ができてきて、ケガもなくなってきた感じ。3、4年になって自立していくと自ずと結果もついてきましたね」

 

 中村「4年生の時は主将も務めましたが、口で言うより背中で引っ張るタイプ。そこで悩みが出て、4年の前期とかは貧血とかで苦しかった部分もありました。最終的には、全日本4連覇に貢献できたり、箱根2位とかなんとかまとめることはできたのかなとは思います」

箱根駅伝は2年3区3位、3年1区2位、4年1区1位。特にスターターとしての素質は高く、勝負所の見極めと抜群のスパートを支えるタフな精神力は、指揮官の生き写しとも言える。大八木監督といえば、選手へ熱いゲキを飛ばすことで有名だが、意外な事実もあった。

 

 寺島アナ「監督と言えば『男だろ!』と声をかけるイメージですが、中村選手もレース中に言われたことはあるんですか?」

 中村「いえ、おそらくないと思います(笑)」

 福嶋正監督(以下、福嶋監督)「そのくらいいい走りをしていたってことでしょう?」

 大八木監督「いやあ、匠吾は1区が多かったので、後ろに(運営管理車などで)つくことも少なかったからね。どちらにせよ、しっかり走っていましたから、ゲキは飛ばしていないですね」

 

 そんな駒大も、時代の変化の中で様々なライバルとしのぎを削ってきた。時には順大との紫紺対決など象徴的な戦いもあったが、その1つには大八木監督と同じ福島県出身の酒井俊幸監督率いる鉄紺軍団・東洋大とのデッドヒートも刻まれている。

 

 柏原竜二氏(以下、柏原氏)「とにかく、駒大は速いというより強いんですよ。こちらが仕掛けても怯まないし、常に強気。大八木さんが選手に乗り移っている感じでしたね」

 大八木監督「柏原君も(同郷である)福島の後輩。山の神ということで、箱根5区はレースを左右する区間ですから。いや、あの頃の東洋大には中々勝てなかったですね」

 柏原氏「いろんな大学のスタッフさんは『柏原君は5区じゃない区間も行けるよ!』と言うんですが、大八木さんだけは『5区に柏原がいる東洋大に勝たないと意味がない!』と言ってくださったと聞いて、すごくうれしかったのを覚えています」

 大八木監督「真っ向勝負して負けたらしょうがない。それだけの思いで常にやっていましたし、それは選手たちも感じてくれていたと思います」

 柏原氏「福嶋監督も、箱根の監督どうですか?やってみたいですか?」

 福嶋監督「いやいや、無理ですよ(笑)。大変なのも分かっているので。どうせなら、2区を走ってみたいよね。エース区間だし、名だたる選手がウチのチームには来ているけど、自分が現役だったら走ってみたいなあ」

 

 学生駅伝を経て、実業団でもその強さをいかんなく発揮している中村。ニューイヤー駅伝にも3度出場し、16年1区6位、18年5区4位、19年4区9位と安定した走りを見せている。一方、チームはアクシデントもあって予選敗退し20年大会は不出場。今季は部員一丸となって東日本予選に臨み、優勝という最高の形で本戦へと駒を進めたが、支えになったのは見えない声援だった。

福嶋監督「あくまで予選ですが、優勝しましたので目標はクリアできました。チームの状態はすごく良くて、7人に選考するのに苦労しましたね。社内でのZOOM観戦会は、選手たちもすごく励みになっていました。応援してくれているというのは1人1人が感じ取っていましたし、モチベーションも上がっていました。本当にありがたいです」

 中村「昨年の悔しさもありましたが、まず一安心。個人としては前半自重してしまい区間賞が取れなかったのは悔しいところです。選手たちもコロナ禍で出社減って、社員と接する機会が減りました。ZOOMを通して応援してもらえるのは励みになりましたし、たくさんの方に集まってもらったのを見ると、こちらももっと頑張ろうと思えます。結果で恩返ししたいです」

 

 コロナ禍で現地観戦は難しいが、この機会にリモートで競技を見ることによってファンが増えつつある。いずれは競技場や沿道で声援を送り、その熱を肌で感じる日もやってくるだろう。富士通社員をはじめ、多くの人が注目する2021年、全てのスポーツに先駆けて行われるニューイヤー駅伝へ、チームを引っ張る2人は並々ならぬ思いで臨む覚悟を明かした。

 

 福嶋監督「もちろん、優勝ですよね。旭化成さんが強いのは分かっている。だが、今年は選手たちととにかく『駅伝で勝とう』と意思疎通している。強い旭化成さんにどこまで食らいついていけるか。混戦に持ち込んで、アンカー勝負するくらいのつもりで臨みたいですね」

 中村「東日本予選は久々の駅伝で緊張感もありました。応援自粛という中ではありますが、ZOOMやテレビを通して応援していただけたら、選手の力になります。ニューイヤー駅伝から始まる五輪イヤーなので、弾みをつけるいいレースにしたいです」

(後編は20211月公開予定です)

駅伝・マラソントークイベント Fujitsu Sportsチャンネル(YouTube

20201225日~202114日限定公開