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陸上 富士通陸上競技部


FIELD EYE 川﨑 真裕美
見つけた仲間と共に世界を歩む

人生初の失格と新しいスタート

日本競歩界トップ選手としての強気

2003年11月、23歳だった川﨑真裕美は、山形県で行われた第42回全日本競歩大会で初めて日本新記録を出した。それ以来、3000m、5000m、10000m、20㎞の各競歩種目で日本新記録を更新すること、実に15回。数多くのレースで優勝してきた川﨑は、まさに日本女子競歩界の第一線を“歩き”続けてきた選手だ。

そんな彼女にとって、2009年は節目の年となった。特に大きかったのが、8月のベルリンでの世界選手権20km競歩で人生初の失格を経験したことだろう。自ら「8位以内入賞は目標ではなくノルマ」としていたが、11 km付近でロスオブコンタクト(両足が地面から離れる反則)により失格。川﨑はレースをこう振り返る。

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「自分をコントロールできないくらい好調で、それにまかせて競技をしてしまいました。序盤で『5〜7番が狙える』と思い、気持ちがはやった部分もあります。改めて競歩の難しさを感じました」。果敢に攻める歩きは川﨑最大の特徴だ。自分の信念に従い上位を狙った結果が、悪い方向に出てしまった。

だが、自分らしいレースをした川﨑に迷いはない。「確かに残念でしたが“失格も1回は経験しておいた方がいい”と前向きになれました。日本のトップを獲るのに、失格ぐらいでめげてはダメだと思う」。川﨑の気持ちは全く折れていない。「失格しないと分からないこともあったし、世界に通用する部分も分かった。負けても強気な自分でいられるのは、いいことだと思います」。彼女なら、この経験を必ず今後に生かしてくれるはずだ。

練習日誌に綴る言葉「一歩を確実に、胸を張って」

川﨑は世界選手権を戦った直後、こう宣言していた。「次は日本記録を出します!」。そして迎えた9月の第57回全日本実業団対抗陸上競技選手権(岡山)。川﨑は見事に10000m競歩で43分21秒90の日本新記録をマークして優勝を飾る。さらに10月に行なわれた第64回国民体育大会(新潟)では、同じ10000m競歩で自ら作った記録を14秒縮める日本新記録で優勝。2009年後半は記録ラッシュが続いた。

本人は「元々自分の記録ですから、更新しても不思議はないです」と謙遜するものの、本人の成長なしにタイムは縮まらない。これも、彼女の経験が力になって現れた証拠だ。「昨年に比べて1分半タイムを縮められたので、進化しているなとは感じています」。だが、もちろん彼女は現状に満足していない。「世界で戦うには、もっと日本記録を底上げしていかないといけない」。

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川﨑の目は、もう未来に向いている。「今年はまず、1月末の日本選手権で勝つことが目標。そこで勝って、ワールドカップやグランプリシリーズなど海外の試合で上位に入り、世界でも通用すると証明したい」。川﨑は相変わらず貪欲だ。「その後、2011年の大邱(テグ)の世界選手権ではメダルを獲りたいし、2012年ロンドン五輪では・・・、何度言ったか分からないですけど入賞したいと思います」。目標を口に出して、明確化する彼女。ひとつでも多く有言実行となることを願いたい。

実はベルリンでの世界選手権以降、川﨑は練習日誌に毎日ある言葉を書いている。その言葉は『一歩を確実に、胸を張って』。「ベルリンでは一歩一歩確実に踏み出すことで、前へ進めると痛感しました。基本が成果を生むと改めて感じたんです。今はまだ、これからに向けて色々試すことができる時期。今年は、新しいスタートの1年だと思っています」。経験を得た川﨑は今、“一歩ずつ確実に”次のステージを進んでいる。


仲間と共に進める歩み

自信を持つと人間は変わることができる

自らの性格を「とにかくポジティブ。落ち込んでも1日くらい」と表現する川﨑。常に前向きな姿勢には、競技者としてだけではなく、人間的な“すがすがしさ”さえ漂う。だが、そんな川﨑も以前は、引っ込み思案で自分に自信が持てない性格だったという。

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川﨑が競歩を始めたのは、高校1年生の時。競歩の指導経験がある先生から、「お前も競歩を始めたら国体に行けるぞ」と勧められたのがキッカケだった。頑張るほど縮まるタイムに喜びを感じ、競歩の面白さに魅せられていった川﨑。だが、結果が出せず不安な時期もあった。「私は遅咲きだったので、世界大会デビューも遅かった。だから『向いてないかも』と、不安はありましたね」。だが、23歳で初めて出した日本新記録が彼女に勇気を与えた。

「その時、『私にもできるかも』という自信が湧いたんです。当時、競歩は今以上にマイナーだったので『この競技をもっとメジャーにして世界で通用する種目にしたい』という責任感も生まれた。アテネ五輪にも出て、そのあたりから精神的にも変わり始めました」。川﨑は自分を信じることで、弱さを克服した。

「今も赤面症で、人前での講演とかは苦手ですが、競技をしていくうちに性格も変わっていった。根本的な性格は変わりませんが、強くなるというか、自信を持つと人間って変われると思うんです」。彼女は競歩を続けることによって、人としての強さを手に入れた。それは、諦めずに競技を続けてきた成果と言えるだろう。

新天地で見つけた仲間

そんな川﨑が富士通に入社したのは2008年12月。それまでは海老澤製作所に所属する茨城の地元選手として応援されてきただけに、迷いはあった。「ずっと応援してもらっていたので、簡単には茨城を離れられませんでした。でも、高みを目指す上で色々な条件を考えて、富士通に決めました」。恩義を忘れない川﨑だが、後悔はしていない。「移籍してよかったなと思いますし、選択は間違っていなかったと思います」。

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その理由のひとつに、練習内容の向上がある。「今村コーチに見てもらいだして、すごく練習の質が高くなったと思います。例えば20kmを歩くにしても、以前は一定のペースで歩く練習しか知らなかった。でも今は同じ20kmでも、最初5 kmはゆっくり入って、あとは3kmごとにペースチェンジするような練習もしています。設定タイムも集中しないとクリアできないくらいですし、本当に中身の濃い練習ができていると思います」。

また、富士通移籍によって得られたのは、自身のレベルUPだけではなかった。「以前は母校で練習していたので、一緒にトレーニングする仲間は高校生だったんです。でも、富士通には陸上のトップアスリートが集まっている。レベルの高い仲間から、たくさん刺激をもらいました。そういう環境に入ったことは、自分にとってすごくプラスになりました」。現在、競歩では川﨑と共に森岡紘一朗、大利久美の3人が世界を相手に戦っている。一緒に戦う同志ができたことは、川﨑にとって最大のプラスとなった。

「何より仲間ができて楽しくてしょうがない」。川﨑は笑顔で語る。新しい仲間は、彼女をより強くすることだろう。それはきっと、彼女が世界へ歩みを進めるための大きな助けとなるに違いない。


プロフィール

口野 武史

川﨑 真裕美
(かわさき・まゆみ)

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川﨑選手あれこれ

  • 川﨑選手は多趣味。今年は語学習得がひとつの目標なのだそうです。「世界で通用するアスリートを目指しているわりに英語もできないし、来年は韓国の大邱で大会があるので、今年は英語と韓国語を勉強したいですね」とは言うものの、苦戦中のよう。「英語は、聞き始めて3カ月も経ちますが全然頭に入ってこなくて・・・。でも、公表したからには頑張ります」。何事も有言実行!
  • 嫌いなものはありますか?「特にないので何でも食べられます」。では、好きなものは?「海外に行ってもお味噌汁は飲みたいので、インスタントのお味噌汁と湯沸かし用のポットは持って行きますね。あと、お醤油と。あ、お味噌汁にゴマ油を入れたら中華風の味になってとてもおいしいですよ(笑)」。
  • という感じで、料理も好き。得意料理などは?「バナナパウンドケーキが大得意です。おいしく作るコツは、ホットケーキミックスに発酵バターを使うんです。絶対に失敗しないですよ!」。お菓子以外では「けんちん汁とか豚汁が得意」とのこと。作った料理は、寮の仲間たちに振る舞っているそうです。
  • ショッピングは基本的に即決タイプですが、色々なところに立ち寄るのも好き。「この前は少し時間があったので、ショッピングセンターに7〜8時間いました。お店が多くて4〜5周見て周っていたら、知らないうちに時間が経っていて・・・(笑)。大利さんもいたのですが、すっかり彼女を振り回してしまいましたね」。大利さん、お疲れ様です・・・。
  • 今後は筋力強化がテーマという川﨑選手。「上半身を中心に筋力がアップすれば、腕の振りで浮いてしまう足の動きを抑えたり、フォームも少し変わってくると思うので、強化していければと思います。もうひとつは、質の高い練習をこなせるようになりたいですね」。
  • 「1年間、ほとんど競歩から離れることはない」という川﨑選手ですが、「常にリフレッシュしているので練習は苦にならない」とのこと。「練習を嫌になったことはないです。無理なくやらせてくれる、いいコーチに巡り合えたと思います」。これからも、チームみんなで頑張ってください。

取材・文/NANO Association

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観客席から観ただけでは決して感じとる事のできない選手ひとりひとりのストーリー。

陸上への想い、悩みや葛藤、そして素顔の部分など、選手自身の言葉で語っています。

今後もFIELD EYEでは選手に密着取材し、富士通陸上競技部の選手を紹介していきます。