FIELD EYE 畑 恵里子(#5 C)
本当にチームを“担う”キャプテンへ
今年から新キャプテンを任されることになった富士通RedWave、C(センター)#5畑。皇后杯3連覇(2006、2007、2008)、2007-08シーズンWリーグ優勝時の主要メンバーであり、今季『王座奪回』を合い言葉に戦うチームにとって、なくてはならない存在だ。そのチームは今、10月のシーズン開幕に向け体力・筋力UPを大きなテーマにトレーニングを行っている。

「今は基本的に2部練習で、午前中はトレーニングがメイン、午後はバスケットボール中心のメニューをこなしています。フットワーク系も陸上系もあって、結構キツイですね(笑)」とチームの現状を説明してくれた畑。実際、先日山形で行われた合宿も岡里ヘッドコーチが公言していたように、かなりハードなものとなったようだ。「私は日本代表の合宿があったので、最後の2日間しか参加できませんでしたが、みんなかなり辛そうでした(笑)」。
上背のある選手が少ないRedWaveにとって、スピードや機動力はひとつの生命線。「今シーズンのチームは、走って動きのあるバスケットボールを展開するプレースタイルになると思います」と畑。RedWaveでは、一般的にパワープレーの中心となるセンターにも、その動きが求められている。「私にも走りが求められているので、そういった部分も頑張っていきたい」。7月末には三重県でサマーキャンプ(W、W1リーグ所属の各チームが集まって練習試合を行う)が行われる予定だ。大会では、どのチームも今までの練習内容が、どこまで通用するのか試してくる。今後は、それも視野に入れた練習になるだろう。
日本代表チームでは、4番CF(センターフォワード)もこなす畑。代表での経験について聞くと、「他チームの核となる選手が集まってくるので、とても刺激になるし、新しいプレーを試したりできるのは嬉しい」と貪欲だ。元RedWaveの中川文一監督とも再会し、選手の体調や精神面への気遣いに感銘を受けた。「今後、代表に続けて選ばれるかどうかは監督の判断次第ですが、呼んでもらえるように頑張りたいと思います」。
国内屈指のプレーヤーとして認められた畑にかかる期待は、チーム内でも大きくなる。岡里ヘッドコーチも先日の会見で、「チーム全員で点を取る」と話した。畑も、その責任を負わなければならない。「ひとりひとりが責任を持ってプレーし、誰かひとりに頼るのではなく、チームみんなで戦っていきたいなと思います。新しく入ったサミさん(立川真紗美選手)も、いい刺激になりますね」。
岡里ヘッドコーチの指導についても「細かいところも指導していただけるので、とても助かっています。特に若い子達にとっては、非常に大事なことだと思いますね」と、いい関係が築かれている。ヘッドコーチからは「もっと点を取って欲しい」と言われているそうだが、彼女もその期待に応えるべく、「チームにはインサイドで確実に点の取る選手がいないので、そんな存在になりたい」と力強く語ってくれた。
そんな彼女にとって、今シーズンの目標はもちろん「チームの目標と同じく『王座奪還』」。だが、彼女の中には、もうひとつの決意がある。「去年は先輩に頼ってしまう部分もあったのですが、今年からはキャプテン。今はまだ私が言葉をかける前に、ヘッドコーチや上の人が先に声を出す時があるので、今後はもっと成長していきたいですね」。
日本の女子バスケットボールでは、コートネームがつけられることが多い。これはコート内で呼ばれるニックネームだ。畑のコートネームは『ニナ』。これは前所属チームである日立戸塚に入部した時に、チームから名づけられたもので、「チームを“担う”」からきているという。「かわいい名前すぎて、ちょっと恥ずかしい」と照れる本人。しかし、今年からはRedWaveのキャプテンに任命され、本当の意味でチームを“担う”存在となった。日本一を目指すチームの主将として。彼女には明確な目標がある。
「自分が中心になって、みんなや下の子達を引っ張っていけるような選手になりたい」
今やチームの核として活躍する畑だが、バスケットボールを始めたきっかけは、「先輩に『大きかったから』という理由で、強引にメンバー登録されたから」なのだとか。「ミニバスから始めたのですが、その時から、ずっとポジションはセンターですね」。その後、中学校時代に「もっと強いところでプレーしたい」という気持ちが芽生え、地元を離れ転校。中学校では全国大会を経験した。しかし、畑の中ではまだ、実業団チームでプレーする考えはなかった。
その意識が変わったのは、高校時代。「幸いにも高校の時に全国大会に毎年出場させてもらって、もうちょっとやりたいと思いました。最初は教員を、と思っていたのですが、いくつかのチームから誘いがあったので、実業団チームを選びました」。畑はトップチームでプレーしたいという気持ちと、チームの雰囲気が気に入り、日立戸塚への入部を決める。
ただ、この選択には家族からの反対もあった。「父が選んで欲しかったチームと違ったので、ケンカになりましたね。父は真剣に野球をやっていたから、私のやっているスポーツに関しても理解を示してくれて、昔から相談する時は常に父でした。自分でも、お父さん子だと思います」。
しかし、その入ったチームが入部から僅か1年でまさかの廃部。その時怪我をしていた彼女は、「他チームへ移籍できるかどうかわからない」と不安になった。しかし、その時の日立戸塚のアシスタントコーチが富士通に入部することとなり、その繋がりから畑にも声がかかった。その時の心境を彼女はこう語る。「本当にありがたかったですし、その時は父もとても喜んでくれました」。

彼女がバスケットボールのキャリアにおいて度々思い出すのは、父が言い続けた「努力しろ」という言葉だ。だから彼女も自然に、「努力すれば何かしらの結果は出る」と信じるようになった。そして、よく連絡を取る高校当時の恩師もまた、彼女のキャリアに大きな影響を与えた人物だ。「高校時代は自己中心的なプレーヤーだった私に、『自分の立場を考えて行動しろ』とよく指導されました。それ以降は周りにも目を配るようになりましたね」。
先輩に勝手に登録されて始めたバスケットボール。父の存在、高校時代の恩師。彼女が歩んできた道は、多くの人に支えられて成り立ってきた。今、チームをまとめるキャプテンに任命され、改めて畑は思う。
「精神的な面で支えてくれた父に加えて、今まで指導者には本当に恵まれてきたので、とても感謝しています」

- 畑 恵里子
- (はた・えりこ)

- C(センター)

- 5
本当の意味でレッドウェーブを”ニナ”えるように、心も身体ももっともっと強くなりたい。
そして一度手放した『王座』を、もう一度取り戻す。
- 仲良しな選手は#1三谷藍選手や#11蒲谷千恵選手、そして元チームメイトで今は日立ハイテクで活躍している磯山絵美選手。他には、高校で一緒だった元シャンソン化粧品の藤生喜代美さん。藤生さんとはお互いに刺激しあう仲で、プライベートでもよく相談にのってもらったのだとか。でも、昨シーズンで引退すると聞いた時は「正直、さみしかった」そうです。
- ちなみに、高校時代のコートネームは「シュートが入るように」と名づけられた『シュウ』。入部した時に3年生の先輩からつけられたそうです。
- 休日の過ごし方は、「買い物に行ったり友達と会ったり、映画とか観ていますね」。出没するのは川崎駅周辺が多いとのこと。最近観た映画は『おくりびと』。感想は一言、「あれは泣けましたね」。でも実際は疲れからか、休日に出かけようと思っても、「結局、家でゆっくりしてしまうことの方が多いかも(笑)」。
取材・文/NANO Association





